2019 Fiscal Year Research-status Report
ボルナウイルス感染細胞の運命:ウイルスの新たな神経病原性を探る
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18K19443
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀江 真行 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20725981)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ボルナ病ウイルス / ボルナウイルス / Cre / 感染排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
培養細胞を用いたin vitroの実験およびマウスの脳スライス培養を用いたex vivoの実験を行った。 培養細胞を用いた実験では、昨年度に作出したCreリコンビナーゼ発現組換えボルナ病ウイルス(rBoDV-Cre)とCre依存性に蛍光タンパク質の発現を変えるOL細胞およびVero細胞を用いた感染実験を行った。OL細胞については昨年度に引き続き、長期的な継代を行っても100%感染細胞を得られず、60%程度で感染が止まってしまった。Vero細胞については昨年度にほぼ100%持続感染した細胞が得られていたものの、興味深いことに、ごく一部(0.1%以下)の細胞は蛍光タンパク質の発現が変わっていなかった。このような細胞はBoDV非感受性である可能性が考えられ、今後の病原性解析に有用である。 マウスの脳スライス培養を用いたex vivoの実験では、Cre依存性に蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックマウスを用いて、脳スライス培養を作成し、rBoDV-Creを感染させた。特に神経細胞は非常に効率よく感染したものの、rBoDV-Cre感染細胞の一部ではCre/loxP部位特異的組換えによる蛍光タンパク質の発現が見られなかった。同様の現象は、コントロールで用いた他のCre発現ウイルスでも同様の現象が見られた。そのため、神経細胞の一部ではCre/loxPの組換えがうまく働かない可能性、あるいは神経細胞の一部ではloxPの組換え遺伝子座において何らかの変異がある可能性が考えられた。 一方で、予想外の成果も得られた。作出したrBoDV-Creの塩基配列を決定したところ、Cre遺伝子において10塩基の変異が見つかった。すべての変異はGからAへの変異(プラス鎖の配列)であった。このことから、BoDVのゲノムにおける外来遺伝子は、宿主のRNA編集酵素であるADAR1によって編集され得る可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養細胞ではOL細胞において一定の感染率から上昇しない、また脳スライス培養の実験系では一部の神経細胞ではCre/loxP部位特異的組換えが見られないという、事前に予測不可能な事態が起きており、やや遅れている。一方で、培養細胞の一部の細胞はBoDV非感受性であること、またrBoDVの外来遺伝子がRNA編集を受ける可能性が示され、BoDVの新たな病原性あるいは宿主とBoDVの新たな相互作用を見出すきっかけとなり得る発見をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、培養細胞を用い、抗ボルナウイルス薬であるファビピラビルやリバビリンを用いて感染を排除、あるいは感染を抑え、RNA-seq等によって、非感染細胞、ウイルス感染細胞、およびウイルス感染後にウイルスを排除した細胞の3つの細胞における宿主遺伝子の発現解析を行う。 また、RNA編集の可能性が示されたため、もとのCre遺伝子の配列をもつrBoDVゲノムRNAと、変異後のCre遺伝子の配列を持つBoDVゲノムRNAを用いた実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
OL細胞における感染率が上昇しなかったこと、および脳スライス培養系においてCre/loxP部位特異的組換えが起こらない神経細胞が多数見られるなどの予測できない事態により一部計画がやや遅れている。そのため、これらの実験の後の解析で予定していた費用を次年度に使用することとなった。
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