2020 Fiscal Year Research-status Report
ボルナウイルス感染細胞の運命:ウイルスの新たな神経病原性を探る
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18K19443
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀江 真行 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20725981)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | ボルナ病ウイルス / ボルナウイルス / Cre / 感染排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、ボルナ病ウイルス(BoDV)のアンチゲノムが宿主細胞のRNA編集酵素ADAR1によってRNA編集を受ける可能性を見出した。本年度は昨年度に得られた成果の再現性を追求するため、新しくCre発現組換えBoDV(rBoDV-Cre)を人工合成し、その配列の解析を行った。その結果、Cre遺伝子領域に9塩基の変異が観察された。この9塩基の変異は昨年度に作出したrBoDV-Creと同様に、すべてGからA(プラス鎖)の変異であった。またそれらの変異はすべて、昨年度に作出したrBoDV-Creとは違う箇所に導入されていた。 本年度の研究によって、昨年度の結果を再現することができた。これまでの結果から、rBoDV-Creは宿主のADAR1によって、RNA編集を受けている可能性が示された。ADAR1は二本鎖RNAを認識してRNA編集を導入することが知られている。二本鎖RNAは細胞内において自然免疫を誘導する可能性がある。興味深いことに、本年度および昨年度に人工合成を行ったウイルスは両方とも、合成直後は感染伝播力がが極めて弱く感染拡大は見られなかったが、ある時期を境に急激に感染拡大が見られるようになった。本年度および昨年度に人工合成を行ったウイルスの変異箇所が異なることから、合成直後はCre配列が二本鎖RNA構造を取るため自然免疫を刺激してウイルスは感染を拡大することができなかったが、ADAR1によって二本鎖RNA構造をとらないような変異を獲得したウイルスが感染を拡大することができたということが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はCOVID-19の影響により、脳スライスを用いた実験を遂行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も渡航は厳しいことが予想される。そのため、当初予定していた脳スライスでの実験にこだわらず、培養細胞での解析を行う。また、昨年度得られた想定外の現象(BoDVが宿主細胞のADAR1によってRNA編集を受ける可能性)の確認とその生物学的意義の追求を行う。昨年度および今年度に得られたrBoDV-Creの変異から、その共通する現象を見出し、さらに実験を行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19パンデミックにより、海外の研究機関で遂行予定の研究を行うことができなかったため、次年度へと繰り越した。
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Research Products
(3 results)