2018 Fiscal Year Research-status Report
二種類の慢性感染症モデルを用いたT細胞疲弊の多様性と可逆性の分子機構に関する研究
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18K19456
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
由井 克之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90274638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
都田 真奈 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (30398151) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | マラリア / T細胞 / 赤血球 / 疲弊 / 記憶 / 脾臓 / 遺伝子発現 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア原虫感染から治癒後、再感染における感染防御能はマラリア原虫モデルにより異なる。Plasmodium berghei ANKA (PbA)株では再感染防御がほとんど働かないが、P. chabaudi chabausi (Pcc)株感染の場合には再感染防御が有効である。これらの異なる免疫応答の違いを解明するため、PbA株とPcc株に共通の抗原を認識するT細胞受容体トランスジェニックマウスPbT-IIをC57BL/6マウスに移入し、PbA株とPcc株を各々感染させた。感染初期では、どちらの感染も同程度の原虫血症を示し、抗マラリア薬治療により原虫血症は速やかに低下した。PbT-II細胞の比率を末梢血で比較すると、PbA株感染でh感染6日目にピーク、Pcc株感染では8日目にピークを示し、その後低下した。感染3週間目では、PbT-II細胞の比率はPbA感染の方が高かったが、細胞表面分子の発現をフローサイトメトリーで解析すると、Pcc株感染の方が活性化型の表面抗原を示すT細胞の比率が多かった。これらのマウスに、抗原ペプチドをパルスした樹状細胞で刺激実験を行ったところ、PbA株で感作したマウスとPcc株で感作したマウスでは、PbA株で感作したマウスの方がPbT-II細胞の低下は早かった。 PbA株とPcc株による感作で見られた違いについて、T細胞の要因を探るため、PbT-II細胞をソーティングにより分離し、遺伝子発現をマイクロアレイ解析により明らかにする準備を行った。 今後、両細胞の遺伝子発現、細胞表面分子発現、機能など明らかにする。また、感作する原虫による違いの原因を明らかにするため、脾臓の環境についても調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験系は確立しており、今後の課題は安定したデータを作成する点にある。遺伝子発現を解析するためのRNA精製の準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
感染の各時期において、PbT-II細胞をソーティングにより精製し、遺伝子発現解析を進める。また、感染時期ごとのPbT-II細胞数、細胞表面分子発現、サイトカイン産生などの機能解析については、十分に再現性のあるデータを取ることができるよう、繰り返し実験を行う。
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Causes of Carryover |
本研究で最も支出が大きいのは、T細胞の遺伝子発現解析である。2018年度の研究では遺伝子解析まで進まなかったため、その部分の物品費の使用は少なくてすんだ。T細胞のマウスへの移入実験とそのフローサイトメトリー解析などが中心になり、試薬類は既に研究室の備えられた汎用性の高い抗体を用いることができたため、費用が抑えられた。2019年度は、2018年度に積み残した課題を含めて、遺伝子解析などを中心に幅広く展開する予定である。
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