2019 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞の糖代謝と相同組換え修復に注目した合成致死誘導の分子基盤
Project/Area Number |
18K19486
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
冨田 章弘 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター ゲノム研究部, 部長 (40251483)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | がん細胞 / 代謝異常 / 相同組換え修復 / 合成致死 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、糖代謝機構を制御し、相同組換え(homologous recombination: HR)修復不全を利用して合成致死に導くという、新しい治療戦略概念の確立を目指す。そのため、「柱1.糖代謝阻害によるHR修復不全誘導を基盤とした治療法のPOC取得」と「柱2.HR修復不全誘導を制御する分子機序の解析」の二つの柱をたて、相互に連携を図りつつ、研究を推進する。当該年度においては、昨年度に引き続き、培養細胞を用いた研究を中心に実施した。具体的には、柱1の研究においては、昨年度、2DGと同様にシスプラチンとの合成致死誘導作用を持つ、糖代謝阻害剤やグルタミン代謝阻害剤の同定に成功したことから、こうした阻害剤の標的分子をノックダウンすることにより同様の作用が見られるかを検討した。その結果、グルタミン代謝関連酵素のノックダウンにより、阻害剤と同様に、シスプラチンへの高感受性化が誘導されることが明らかになった。そこで、当該酵素の阻害剤についてさらに詳細に検討を進めたところ、2DGと同様に、シスプラチンとの併用によって、DNA2本鎖切断の蓄積や細胞周期のS及びG2/M期への高度の停滞など、HR修復不全と合致する現象を誘導することが観察された。また、動物レベルでの評価に向けた準備を進めた。一方、柱2の研究においては、ヒトがん細胞パネルJFCR39の中で、2DGとシスプラチンとの合成致死効果について、特に高感受性を示した6細胞株と抵抗性を示した6細胞株を抽出し、構成的な遺伝子発現の比較解析を進めた。その結果、ミトコンドリア代謝に関与する因子等の発現量に違いを認めた。さらに、これらの高感受性群と抵抗性群について2DG処理時の発現変動についての比較解析へ展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、糖代謝を標的とする新たな合成致死誘導法の開発を目指し、がん細胞の解糖系阻害によって起こるHR修復不全に焦点をあて、その分子機序を明らかにし治療標的としてのPOCを取得することを目指している。当該年度では、昨年度見出したシスプラチン高感受性化を誘導できる糖代謝阻害剤やグルタミン代謝阻害剤について、その標的分子のノックダウンにより同様な効果を示すものを見出すことができた。その結果、研究を進める上での基盤をさらに強化できたものと考えている。また、種々のヒトがん細胞株を用いた検討では、解糖系阻害によってシスプラチン高感受性化が認められる細胞株と、認められない細胞株の比較解析が可能な状況となり、遺伝子発現解析で一定の成果を得ることができた。次年度は、これら細胞株の遺伝子発現情報等を活用し、HR修復不全誘導のメカニズム解析をさらに進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年間の計画で第2年次終了時点であり、研究はおおむね順調に進み、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題はないものと考えている。最終年度においては、当初の予定通り、これまでの成果に基づき、「柱1.糖代謝阻害によるHR修復不全誘導を基盤とした治療法のPOC取得」、ならびに「柱2.HR修復不全誘導を制御する分子機序の解析」を継続する。引き続き、培養細胞を用いた研究を進めるとともに、臨床応用を視野に入れて、動物レベルでのPOC取得・薬効評価の研究への展開を図る。
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