2018 Fiscal Year Research-status Report
非典型核酸形態が惹起するがん種横断的脆弱性の分子基盤と治療応用
Project/Area Number |
18K19487
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
清宮 啓之 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 部長 (50280623)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | グアニン4重鎖 / がん細胞 / 薬剤感受性 / 核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
グアニンに富む準反復性の核酸配列は、グアニン4重鎖(G-quadruplex: G4)と呼ばれる特殊な核酸構造を形成する。これまでの我々の検討では、ある種のがん細胞は何らかの分子異常によりG4の安定化に対して脆弱性を示すことが明らかとなっている。しかしながら、その実態は明らかでない。本研究では、G4安定化化合物(G4リガンド)に高い感受性を示すがん細胞の生存・増殖システムに刻み込まれた、「G4の安定化に伴って露呈する脆弱性」の本質解明を目指す。まず、種々のがん細胞株に対する複数のG4リガンドの増殖抑制効果を測定し、超感受性(hypersensitive)細胞株および耐性細胞株を選定した。これらの細胞株からゲノムDNAを抽出し、エクソーム解析を行い、G4リガンド感受性と相関する遺伝子変異セットの抽出に着手した。一方、G4リガンドに超感受性を示すことが判明した膵がん細胞株に対して、合成G4リガンドであるPhen-DC3を亜致死的濃度で長期間継続処理することにより、同剤に対して安定的に耐性を示す細胞亜株を樹立した。この耐性細胞はPhen-DC3以外のG4リガンドにも交差耐性を示した一方、その他の古典的な細胞傷害性抗がん剤に対しては耐性を示さなかった。すなわち、本細胞株はG4リガンドに対して選択的に耐性を獲得していることが示された。この耐性細胞株および親株細胞株について、GeneChipマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を実施し、耐性細胞株で大きく発現上昇もしくは発現低下している遺伝子群を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G4リガンドであるPhen-DC3に対する耐性細胞株を樹立した際、Phen-DC3のオフターゲット効果に対して抵抗性を示す細胞が得られる可能性もあったが、今回の検討で得られた耐性細胞株は複数の異なるG4リガンドに耐性を示した。すなわち、本耐性細胞はPhen-DC3のオンターゲット効果(すなわちG4の安定化)に対して抵抗性を獲得していると推定された。その実態を明らかにすることで、細胞の生存・増殖システムに対するG4動態の関与が浮き彫りになると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
エクソームおよびトランスクリプトーム解析を継続し、抽出されたゲノム様態・応答経路の制御因子や原因遺伝子を分子間ネットワーク/パスウェイ解析で推定する。G4リガンド超感受性・耐性がん細胞を対象にそれらの因子の機能を修飾し、G4動態やリガンド感受性の変化を観察する。これらの検討により、G4リガンドに対する超感受性を規定する分子基盤を明らかにする。また、そのような変化が生じることががんの形質にどのような病的意義をもたらすのか、マウスも用いて多角的に検討・考察する。得られる成果は、核酸形態によるゲノム機能の制御機構を提唱するばかりでなく、G4リガンドの作用機序の理解と効果予測診断への応用につながると期待される。
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