2018 Fiscal Year Research-status Report
がんの治療・診断に向けたmetamorphosis抗体分子の設計
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18K19491
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
鎌田 春彦 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクトリーダー (00324509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 豪 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (20263204)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 抗体分子 / 二重特異性抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、抗原との結合による構造変化を引き起こし、その結果として新たな活性を生み出す新規フォーマットの抗体「metamorphosis抗体」の作製を目指すことを目的とする。本年度は、抗体分子の構造学的安定性に関して検討するとともに、抗体分子の構造解析に向けた検討を行った。これまで作製してきたEphA10とCD3の両者を認識する低分子型BsAbを対象に、比較的少量のサンプル量で測定可能なサーマルシフトアッセイ(TSA)を用いて、タンパク質の熱力学的安定性を解析した。その結果、EphA10/CD3を標的とするtaFv (EphA10/CD3) monomerにおいては、それぞれ安定性が異なる2峰性のTm値が認められたのに対し、scDb (EphA10/CD3) monomerでは、単一のTm値が示されるとともに、taFvの安定性の低いTm値よりも高温側へシフトしており、抗体の熱安定性が向上していることが判明した。一方、コントロールとなるHis/CD3を標的とするtaFv (His/CD3), scDb (His/CD3)のmonomerは、ともに単一のTm値を示し、またscDbフォーマットの方がより高いTm値を示すことが判明した また、これらのdimer同士の比較を行ったところ、taFvでは、多量体化によりTm値が高温側にシフトする傾向が認められたのに対し、scDbではほぼmonomerと同様のTm値を示すことが判明した。このことから低分子型BsAbの殺細胞効果の変化は、抗体の親和性の変化に依存するのではなく、抗体自体が持っている抗原との複合体の形成やそれに伴う抗体の立体構造のダイナミックな変化、あるいは二種の細胞を認識する際の最適な細胞・分子間距離を制御していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、抗体分子の構造学的安定性に関して検討するとともに、抗体分子の構造解析に向けた検討を行う計画であり、ほぼ計画通りに推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では、調製した2種類のBsAb (taFv, scDb)の各分子フォーマットの熱安定性の違いについて検討してきた。その結果、scDbフォーマットは、taFvフォーマットよりも熱安定性に優れたフォーマットであることが示された。これはおそらく、head-to-tail構造を持つscDbでは、構造的束縛が強い分、2種類のFvの安定性が均一化されたことが要因ではないかと推察する。 これまでの検討により、EphA10/CD3を標的とするBsAbでは、Th1サイトカインのプロファイルに大きく影響すること、そしてscDbの方が熱安定性に優れたフォーマットであることが示された。しかしながら、これまでの評価に使用したBsAbはanti-EphA10 IgGおよびanti-CD3 IgGの単一の抗体のみから成るモデルサンプルでの議論に留まってしまう。上述した各分子フォーマット固有の特性とBsAbの発揮する機能との間で見出された結果の一般則に資する情報を集積するためには、特性が異なる他の抗体をもとに、同様の評価を行う必要があると考えた。そこで本年度は、研究実施計画の内容に加えて、IgMサブクラスのanti-CD3抗体から成るtaFv (EphA10/CD3IgM)およびscDb (EphA10/CD3IgM)の調製を行い、これまでと同様の評価を通じて、これまでに示したデータの一般則に関する評価を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画を遂行するための消耗品について、当初の予定よりも安価に入手でき、また研究自体も順調に推移したことから、計画よりも低額で実施出来た。また、学会などへの参加については、平成31年度に繰り下げて実施予定である。
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Research Products
(1 results)