2018 Fiscal Year Research-status Report
発光計測技術の開発による求愛学習中のドーパミン細胞のダイナミクスと機能の解明
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18K19502
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
風間 北斗 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (90546574)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 発光計測 / フェロモン / 嗅覚受容細胞 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ショウジョウバエを用いて、求愛学習に必要なドーパミン細胞の活動のダイナミクスを観察し、学習中にどのような情報処理が行われるかを解明することである。その為には、完全に自由に行動する動物内の特定神経細胞から活動を計測するアプローチが必要となる。そこで本年度は、まず、発光プローブにもとづいた、自由行動する個体から神経活動を計測する新規の技術を開発した。 発光プローブには、カルシウム感受性発光タンパク質Aequorinに蛍光タンパク質tdTomatoをつなげた、Aequorin-tdTomato (Aeq-tdTA)を用いた。Aeq-tdTAはGal4/UASシステムという遺伝学的手法を用いて、特定の神経細胞に発現させた。Aeq-tdTAが発光するために必要な基質であるセレンテラジンは、血管への注射を通して細胞に導入した。Aeq-tdTAを発現させたハエは、アリーナ内で行動させ、発光シグナルの検出には光電子増倍管を用いた。また、ハエの行動はサーモグラフィーを用いて観察した。本技術が機能するかどうかを調べる為に、まず原理証明実験を行った。そこではオスのフェロモンcVAに特異的に反応する嗅覚受容細胞にAeq-tdTAを発現させ、アリーナ内の二匹のオスの行動と神経活動を計測した。その結果、cVAはオスの体表よりもマーキング行動を通して提示される分泌物に多く含まれることが分かった。更にこの分泌物は、オスとメス双方を惹きつけ、求愛行動の場を作り出すことを見いだした。cVAは長年研究されてきたが、マーキング行動により特定のタイミングで積極的に放出され、社会的コミュニケーションに利用されていることが初めて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特定の神経細胞に発光バイオセンサーを発現させ、自由行動するハエからリアルタイムで神経活動を計測するシステムの開発に成功したため。また、原理証明実験を通して、従来の仮説とは異なり、cVAはオスの体表よりもマーキング行動を通して提示される分泌物に多く含まれることを見出し、更にこの分泌物はオスとメス双方を惹きつけるために、求愛行動の場を作り出すことに貢献するという新規の生物学的事象を発見できたため。なお、結果は論文として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は嗅覚受容細胞という末梢神経細胞を用いて実験を行ったが、来年度は確立した実験系を中枢神経細胞に適用することで、求愛学習に必要なドーパミン細胞の活動のダイナミクスを観察し、学習中にどのような情報処理が行われるかを理解することを目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は、嗅覚受容細胞という末梢神経細胞を用いて実験を行ったが、そこで想定外の生物学的事象を発見し、学術論文も発表することが出来た。そのために、本実験系を中枢神経細胞に適用するのが来年度の予定となった。来年度の研究計画を達成するためには、発光タンパク質の基質であるセレンテラジンを効率良く中枢神経細胞に届ける技術の開発や、新規の発光タンパク質の設計が必要になる可能性がある。また、その場合、遺伝子改変動物の新規作成が必要となる。これらの技術開発の為に次年度使用分の予算を執行する計画である。
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Research Products
(5 results)