2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K19507
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
森尾 友宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30239628)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | エピトープマッピング / HLA / 分子模倣 / 感染症 / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常HLA class I分子は8-10アミノ酸を、class II分子は15-24アミノ酸を提示し、それぞれCD8 T細胞、CD4 T細胞を刺激するとされてきた。本研究では全く新しい発想を元に、ウイルスや真菌由来の30mer以上のペプチドが、複数以上のclass I分子に会合し、またclass Iと共にclass II分子に会合することを証明し、それがミニスーパー抗原として働く可能性について検討し、検証することを目的とした。このようなペプチドを、shared broad-reactive antigen (SBRA)と呼称する。 2018年度はまず、今までのウイルス由来overlapping peptides (OLPs)とIL-4, IL-7の培養により、細胞内IFN-gamma以外のサイトカインが検出されるかを検討した。CD4, CD8の亜群に分け、IFN-gamma以外にはMIP1-beta、IL‐2、TNF‐alpha、CD107aの検討を行った。IL-4, IL-10などについてもFACS解析を開始した。また真菌由来OLPsを用いて、同様の手法で、IFN-gamma、TNF‐alpha、IL-17, IL-10などのサイトカイン産生細胞を同定した。 いくつかのペプチドは異なるclass I分子に会合することを、HLAが明らかになっている末梢血単核球と、class I拘束性予想プログラムを用いて検証した。さらにこれらのペプチドが実際に特定のclass Iあるいはclass Iに会合することを証明するために、単独HLA(A2402, A3102, B3501, B5101, DR0901, DR0405, DR1502など、日本人で高頻度のHLA)を発現したK562細胞を樹立した。これらの細胞をペプチドと共培養し、特異的T細胞を刺激し、FACSあるいはELISpotにて細胞内サイトカインを測定できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度はまず、AdV, BKV, CMV, EBV, HHV6に特異的なT細胞、およびAspergillus, Candidaに特異的なT細胞を用いて、刺激後にCD4細胞を中心に、IFN-gamma以外のサイトカインが産生されることを明らかにした。複数以上の細胞ラインを用いての検討であり、今までの検討からもclass I, class II両者からのシグナルが入っていることが予想される。 また単一のペプチドがいくつかのclass I、class IIに会合する証左も得られたが、複数のclass Iあるいはclass I, class IIの両者に会合する可能性については、きれいなモデルが必須である。しかし、これをダイレクトに、また確実に示す手法は今までなかった。そこで、単独のclass I、単独のclass IIを発現するモデル細胞株を作成し、それを用いてHLA拘束性を証明することができたことは、2018年度の成果である。 上記の2つの成果を用いて、まず候補ペプチドを抽出するPBMCを刺激し、細胞内IFN- gamma, IL-4, IL-17, IL-10を検出して、Th1, Th2, Th17, CD4Treg, CD8Tregの指標として解析することが可能になった。 SBRAとなるペプチド候補は10以上上がっているが、この数をさらに増やすことにより、今後の自己抗原との相同性検証等に移行できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は検討を継続して、いくつかの領域に亘るペプチド候補をさらに数多く抽出し、class I 拘束性予想プログラムを用いて、複数class Iにマップされるかを検証することを継続する。Class IIへの共刺激についてはCD4/CD8と細胞内サイトカインの染色を同時に行うことにより、CD4単独、CD8単独、CD4/CD8両者拘束のペプチドを抽出する作業を継続する。 この作業によって少なくとも100前後のSBRAを抽出する予定である。これらを用いて、実際の細胞への多彩な影響(様々なヘルパーT細胞や細胞傷害性T細胞への刺激)、産生されるサイトカインなどを詳らかにする。さらに、得られたSBRAが自己抗原や、その他の既知の抗原と相同性を有するかどうかについては、in silicoでの解析を行う。また現在のところ単独発現させたclass I, class IIは頻度の高いものを中心に7種類であり、今までの会合class I, class II情報から、できるだけ多くの単独HLA発現K562細胞を樹立しておく予定である。これは今後の発展的な研究にも有用になると考えている。 このようなSBRAの存在が明らかになった際に必要なことは、細胞をどのような形で刺激しているのかについての検討である。HLAのoutside grooveに結合する可能性、HLAに様々なaffinityで会合する可能性、同一あるいは異なる細胞のclass Iとclass IIをリンクするなど全く別の機構で会合する可能性が想定される。外溝に会合する可能性についてはスーパー抗原で検証された方法において検討し、共焦点レーザー顕微鏡などでの解析も考慮したい。ペプチドが直接HLAに搭載される可能性については、単一HLAとペプチドそのものの結合をBiacoreなどで検出する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 実験試薬の物品購入の請求が、年度を超えて繰り越しとなってしまったため。 (次年度計画) 繰越金は、次年度の物品購入費に加え使用する予定である。
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Remarks |
Baylor大学のAnn Leen博士とは複数ウイルス特異的T細胞の培養手法について、継続的に情報交換を行っている。
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Research Products
(4 results)