2018 Fiscal Year Research-status Report
ナンセンス変異に対する内因性修復機構の解明と、その治療への応用研究
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18K19512
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐橋 健太郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90710103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝野 雅央 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50402566)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 先天性ミオパチー / リードスルー |
Outline of Annual Research Achievements |
SEPN1関連ミオパチーは乳児期に発症し早期人工呼吸器管理となり重篤であるが、我々は全エクソーム解析によりSEPN1ナンセンス変異(C>T)による高齢発症ミオパチー家系を見出している。本年度は、各免疫染色、電子顕微鏡骨格筋解析などにより、本家系はマルチミニコア病であること確認しており、高齢発症の先天性ミオパチーといえた。またSNPアレイにより、SEPN1領域がコピー数変化を伴わないヘテロ接合喪失領域であることを明らかにしている。ナンセンス変異下のSEPN1の高発現について、新規抗体の作製、利用を通じて、さらにメッセンジャーRNA、スプライシングのレベルでも確認した。CRISPR-Cas9システムを用いて皮膚線維芽細胞にSEPN1変異を導入し、本ヒト疾患細胞モデルを用いて、ADAR2依存的なナンセンス変異部位のRNA編集(T>C)をサンガーシークエンスにより確認できており、先天性ミオパチーの晩発化機序関与の示唆が得られている。さらにCRISPR-Cas9システムを用いて、マウスSepn1遺伝子内の変異相同部位およびその近傍配列をヒト配列化した、塩基置換ノックインマウス2系統の作製に成功しており、マウス表現型、病理、遺伝子発現を解析中であり、またin vivo用ADAR2遺伝子あるいはそのshRNA搭載アデノ随伴ウイルスを共同研究先より入手し、マウス介入研究の準備を整えている。本年度、同意のもとに発症者1名の剖検を施行をしており、これを含めた臨床検体試料を用いて、サンガーシークエンス、RNAシークエンスによる変異部位RNA編集解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者生検骨格筋の免疫染色や電子顕微鏡による超微細形態の観察により、本家系が高齢発症にも関わらず先天性ミオパチーであるマルチミニコア病と明らかにしている。ホモ接合型ナンセンス変異による同胞5名中3名発症の機序の解明目的に、SNPアレイを施行し、SEPN1を含むchromosome 1p36.11領域のcopy number neutral loss of heterozygosityが同定され、患者両親の血族婚の可能性を見出している。またナンセンス変異にも関わらず、さらに発達期以降では発現が低いとされるSEPN1蛋白(SeIN)が患者骨格筋においてむしろ高発現しているエビデンスを、既存の抗体に加え今回新規に作製した抗体を用いてのウェスタンブロッティングで確認しており、またRT-PCRでSEPN1 mRNA発現を確認するとともに、変異によるRNAスプライシング異常惹起の可能性を除外している。CRISPR-Cas9システムによりヒト皮膚線維芽細胞、マウス遺伝子の編集、疾患モデル作成に成功しており、前者を用いてのsiRNA、過剰発現系実験によりADAR2依存的な変異部分のRNA編集機構を見出している。さらに遺伝子改変マウスおよび新たに取得した患者剖検試料を用いて、RNA編集も含めた終止コドンのリードスルー転写誘導という機序解明をin vivo系でサンガーシークエンスおよびRNAシークエンスなどにより進めており、本研究課題の進捗状況については概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックインモデルマウスの表現型、組織病理、生化学的解析を進め、先天性ミオパチー病態、組織RNA編集効率、SEPN1発現動態などの検討を行う。本患者症例においてはアクセスすることが不可能な、胎生期や生後早期も含めた経時的な骨格筋などの解析を本モデルマウスを用いて行う。期待される病態再現の確認に続いて、既に共同研究者より供給されているADAR2遺伝子あるいはそのshRNA搭載アデノ随伴ウイルスの、マウスへの形質導入によるin vivo病態、治療介入実験を進める。また、さらなるヒト細胞モデルの構築を目指し、ノックインヒト皮膚線維芽細胞などを利用することにより、iPS細胞樹立、筋芽細胞への分化誘導につなげ、生化学的、免疫組織化学的に先天性ミオパチーの分子基盤を探究する。これらモデルマウス、細胞で得られた病態の知見については、剖検組織も含めた患者検体試料を用いて確認を行う。一方、先行研究からRNA編集に関わることが示唆された特定のmiRNAについては特異的miRNA阻害剤を用いて、あるいはシード配列をゲノム編集しmiRNA結合抵抗性にするなどし、RNA編集効率の変化を検討する。またHITS-CLIP法により、ADAR2結合RNA群を抽出し、ADAR2標的モチーフ、結合miRNA同定につなげる。さらにモデル細胞やマウスを用い、標的特異的miRNA搭載AAV導入による、ADAR2によるRNA編集効率を検証し、RNA編集機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
本研究では実験遂行過程上、次年度使用額が生じているが、本年度から次年度にかけてシームレスに引き続き細胞および動物実験を続行し、そのため必要消耗品として、qRT-PCR、ウェスタンブロットなどの生化学的解析、免疫組織化学や蛍光免疫染色、in situ hybridizationなどの病理解析、マウス骨格筋細胞回収およびその初代培養、iPS細胞関連も含めた培養細胞実験、マウス実験(手術、表現型解析、組織採取、ウイルスベクター導入手術)、HITS-CLIP解析用のサンプル調整、サンガーシークエンスやRNAシークエンス、に使用する試薬、機器使用料などが挙げられる。その他、実験マウスの管理に関する実験動物利用費の他、マウス系統維持のための管理費用が必要であり、また次年度は得られた研究成果の、学会やシンポジウムなどでの発表に加え、論文投稿を予定しており、そのための費用も必要であり、次年度使用額を次年度研究費用に計上する。
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