2018 Fiscal Year Research-status Report
敗血症患者の脾臓マクロファージをターゲットとした、新規核酸医薬開発
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18K19562
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安田 宜成 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (60432259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 規利 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (90716052)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | miRNA / 敗血症 / 脾臓 / 人工核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症は致死率が高く、また従来からの補液による循環の維持、抗生剤治療を超える治療法の開発が遅れ、救命率の改善が停滞している疾患である。敗血症の病態を見直し、新しい切り口からの治療法開発が望まれる状況にあるが、我々はかねてより、敗血症におけるToll like receptor (TLR)を介したNF-kBの活性化に着目しており、このシグナルを負に抑制する治療法開発に取り組んできた。 我々は昨今、同経路を抑制するのに最も適した因子として、miR-146aを選定し、その発現Plasmidと、Polyethyleneimine(PEI)を共投与することで、脾臓マクロファージに選択的にmiR-146aを発現させ、サイトカインストームを抑制し、マウス敗血症モデルにおける生存率の改善に成功し、当該年1月に米国科学雑誌に成果を報告した。 敗血症治療の新しい方法論として、miRNAを用いた核酸医薬の可能性が示唆されることとなったが、miR-146a発現Plasmidを使用するため、生体内に遺伝子導入される結果となり、臨床応用へのハードルは高い。現在の核酸医薬の主流は、siRNAやアンチセンスを用いた遺伝子導入を要さないものである。今回我々は、天然型のmiRNAそのものを利用する形で、PEIなどのドラッグデリバリーシステムを用いて投与する方法と、miRNAそのもののRNase耐性を高め、より生体内で安定化させた人工核酸で作成し治療に用いる2つの方向性を打ち立てている。 昨今では新規治療薬として、MSCやiPS細胞といった細胞治療と、今回のような核酸医薬の開発が進められているが、後者はより安価に合成でき、核内の遺伝情報や蛋白刺激によるアレルギー反応が少ないと考えられ、大きな期待が持たれている。敗血症という致死率の高い疾患においてこそ、その真価が試されるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況として、まず第一に今回の治療法開発の基礎的根幹に関わる、miR-146a発現plasmidとPEIの複合体をマウス投与した際に、脾臓マクロファージに主に取り込まれ、敗血症刺激に関わる2次的なサイトカインストームを有意に抑制し得るといった学術的成果を、本年1月に米国科学雑誌に報告することが出来た。 次にその治療法に関して、plasmidを使わない方法へ改変させるためのストラテジーとして、天然型miR-146aをPEIをドラッグデリバリーシステムとして投与する方法を進めている。この方法に関しても、全身投与する方法と、治療ターゲットである脾臓に直接注射、投与する方法を試している。現在までに、脾臓直接注射することにより、全身投与するよりも、肺、肝臓、心臓など多臓器に取り込まれることなく、高い割合でCD11b陽性細胞(主にマクロファージ)に取り込まれることを見出している。脾臓直接注射による術侵襲も高くはなく、忍容性が高い。現在主に天然型miRANをPEIをドラッグデリバリーとして用いて、脾臓投与する動物実験を、敗血症モデルとして汎用されている盲腸結紮穿孔モデルを用いて検証している。治療後の生存率、臓器障害、血中サイトカインレベルを評価項目として挙げている。 一方、人工核酸を用いる研究に関しては、名古屋大学工学部分子生命科学講座、浅沼浩之教授のもとセリノールを主鎖骨格としたSNA (Serinol Nucleic Acid) の効果をin vitroの系を用いて検証している。
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Strategy for Future Research Activity |
天然型miRNAを用いる実験に関しては、RNase耐性を付与する必要があり、ドラッグデリバリーの選択、及び投与経路の選定の2つを中心に検証を重ねていく。ドラッグデリバリーに関しては、すでに我々が報告し、使用実績のあるPEIを用いる方法で実験を進めているが、PEI自体が免疫原性を持つとの報告もある。PEIと天然型miRNA146aを、経静脈的全身投与、脾臓直接投与の2つに関し、基礎データの収集を進め、万一PEIによると思われる、期待しない免疫副反応が生じた場合は、リポソームカプセルをデリバリーに用いる方向で調整している。リポソームカプセルは、すでに抗菌薬等で臨床応用されており、新たに動物実験を通して、敗血症下における薬物動態の詳細を検証する予定である。 一方人工核酸を用いる実験においては、in vitroの基礎実験データを更に蓄積する方針である。具体的には、miR-146aのどの部分の配列をSNAに置き換えるかによって、RNase耐性に変化が生じるとともに、RNAi効果にも変動が見られる。様々な改変を加えた人工核酸型miRNA146aを用意し、in vitroの系において、RAW cellにトランスフェクションさせ、LPS刺激に対する炎症性サイトカインの分泌抑制、NF-kBの活性化抑制効果を中心にデータを収集し、最適化したSNA修飾型miR-146aを選定した後に、動物実験へと移る予定である。
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Causes of Carryover |
人工核酸の、in vitroにおける刺激実験の条件設定に注力しており、予定していたドラッグデリバリーシステムを用いた動物実験が遅れています。 さらにpreliminaly な実験として、盲腸結紮穿孔モデルで、元実験で用いたmiRNA発現ベクターを天然のmiRNA-146aに変更して、さらに治療タイミングをより臨床にそくした形に変更して、治療効果の確認を行っているが、一貫して良い傾向が見られるものの、いまだ確実な有意差を得るに至っていない。 以上の理由から、計画していた実験のうち、人工核酸をドラッグデリバリーシステムを用いて投与する実験が遅れているため、そちらを来年度の動物実験に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)