2018 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫病態におけるアンビバレンス(両価性)の解読
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18K19564
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松本 満 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 教授 (60221595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 純子 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (20451396)
西嶋 仁 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (60425410)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | I型糖尿病 / Aire / 抗原提示細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
私どもが樹立したAire-TgではAire発現のためのプロモーターとしてMHC-IIを用いているので、Aireの発現がもっとも強い胸腺髄質上皮細胞(mTEC)に加え、MHC-IIを発現するDCやB細胞といった骨髄由来の抗原提示細胞(BM-APC)でもAireの発現を認めた。既に多発性筋炎様病態の発症については、mTECとBM-APCの両方で発現するAireが必要であることをBMT実験によって明らかにしているが、糖尿病抵抗性を担う細胞がmTECとBM-APCのいずれか、あるいは両方かについてBMT実験を行い検討した。その結果、BM-APC が発現するAireが糖尿病の発症抑制に作用していることが明らかになった。また、B細胞の関与については、B細胞欠損マウスとの二重遺伝子改変マウスを作製してBMTを行っており、その結果が待たれる。 一方、TCR-Tgを用いた実験から、上記のAireを過剰に発現するBM-APCのI型糖尿病抵抗性獲得機能については、膵臓ラ氏島由来の自己抗原を認識するTCR-TgのT細胞を色素標識し、静脈内に投与して膵臓リンパ節における導入細胞の増殖状態をFACSで調べた。その結果、対照となるnon-Tgの膵臓リンパ節内では膵臓リンパ節内に存在するBM-APC によって膵臓ラ氏島由来の自己抗原が提示され、それに反応してNY8.3 T細胞の増殖が観察されたが、Aire-Tgでは膵臓ラ氏島抗原が提示されていないため、そのような増殖反応が見られなかった。すなわち、Aire-Tgでは胸腺におけるトレランス成立機構の障害があるにもかかわらず、末梢においてはラ氏島由来の自己抗原が提示されず、I型糖尿病を発症しない可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
常染色体潜性遺伝を示す多発性内分泌疾患I型(Autoimmune Polyendocrinopathy Syndrome type I:APSI)の原因遺伝子Aireは、mTECと一部のBM-APCに発現する転写調節因子で、自己寛容の成立機構に必須の役割を担う。したがって申請者は、これらの抗原提示細胞においてAireの発現を増強させれば、その免疫寛容誘導作用によって自己免疫病態を改善できる可能性があると考えた。その予想通り、MHC-IIプロモーター下にAireを発現するAire-TgではI型糖尿病の発症を完全に阻止することができた。しかしながら驚くべきことに、Aire-Tgは同時にヒトの多発性筋炎と酷似する病気を発症した。本研究ではmTECやBM-APCなどの抗原提示細胞におけるAireの過剰発現が、どのようなメカニズムによって自己免疫病態の修復と破綻をもたらすかを明らかにし、それによってAireの本質的な機能解明を図る。さらに、Aireの過剰発現によって多発性筋炎様病態が観察された事実から、実はヒトの多発性筋炎においても、Aireの過剰発現が病気の原因であるという大胆な仮説を検証する。初年度は主にAireの過剰発現によるI型糖尿病抵抗性の獲得機構のメカニズムについて、骨髄移植を中心に細胞免疫学的な解析を行い、BM-APCに原因があることを突き止めた。次年度には、さらにその内のDCに焦点を当てて、Aireの過剰発現に伴うBM-APC機能障害のメカニズムを探る。このように、本申請課題については、当初の計画通りに研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの自己免疫疾患の研究は、「病気のなりやすさ」あるいは「病気のなりにくさ」のいずれかのメカニズム解明を目指して行われてきた。すなわち、「病気のなりやすさ」と「病気のなりにくさ」は相反する現象であり、いずれか一方の現象の解明から自己免疫疾患の原因究明や治療法の開発が議論されてきた。他方、ある臓器特異的自己免疫疾患に他の臓器特異的自己免疫疾患が合併することは比較的よく観察される現象である。事実、Aire欠損症(APS I)は複数の内分泌組織を標的臓器とする。しかしながら本研究は、本来、自己寛容の成立に必須の役割を担うAireの過剰発現によって、「病気(I型糖尿病)が治る」ことと「病気(多発性筋炎)になる」ことが同一個体内で同時に発生したことに端を発し、新たな自己免疫疾患研究へのアプローチを構築する計画である。すなわち、本研究課題は「病気になる」ことと、「病気が治る」ことのアンビバレンス(両価性)に着目して今後の研究を継続する。他方、Aire-Tgで観察された多発性筋炎様病態の発症に基づき、ヒトの多発性筋炎患者において、Aireの過剰発現がその原因となっている可能性を我々が樹立したヒトAireに対するモノクローナル抗体を用いて末梢血液で検討する実験を継続する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Aire Controls in Trans the Production of Medullary Thymic Epithelial Cells Expressing Ly-6C/Ly-6G2018
Author(s)
Morimoto Junko, Nishikawa Yumiko, Kakimoto Takumi, Furutani Kohei, Kihara Naoki, Matsumoto Minoru, Tsuneyama Koichi, Kozono Yuko, Kozono Haruo, Hozumi Katsuto, Hosomichi Kazuyoshi, Nishijima Hitoshi, Matsumoto Mitsuru
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Journal Title
The Journal of Immunology
Volume: 201
Pages: 3244~3257
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Paradoxical development of polymyositis-like autoimmunity through augmented expression of autoimmune regulator (AIRE)2018
Author(s)
Hitoshi Nishijima, Tatsuya Kajimoto, Yoshiki Matsuoka, Yasuhiro Mouri, Junko Morimoto, Minoru Matsumoto, Hiroshi Kawano, Yasuhiko Nishioka, Hisanori Uehara, Keisuke Izumi, Koichi Tsuneyama, Il-mi Okazaki, Taku Okazaki, Kazuyoshi Hosomichi, Ayako Shiraki, Makoto Shibutani, Kunitoshi Mitsumori, Mitsuru Matsumoto
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Journal Title
J. Autoimmunity
Volume: 86
Pages: 75-92
DOI
Peer Reviewed
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