2019 Fiscal Year Research-status Report
乳癌幹細胞を標的とした治療法探索のための発光プローブの開発
Project/Area Number |
18K19573
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野田 なつみ 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (30624358)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | 乳癌 / CD44 / 癌幹細胞 / ルシフェラーゼ / 生物発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌は40代女性の癌部位別死亡率の1位であり、生涯罹患する確率が最も高い癌である。5年生存率は90%を超える一方、浸潤性乳癌のトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体及びHER2の発現陰性)は、骨や中枢神経系への転移が多く再発率が高いことからより優れた治療法の開発が必要である。 本研究では、乳癌の癌細胞の浸潤や転移を抑制する治療法を開発するために、乳癌の癌幹細胞マーカーであるCD44に着目している。CD44の細胞外ドメインの切断は癌細胞の遊走や浸潤に関与することから、この切断を測定するために発光センサーを開発した。この発光センサーは二分割されたルシフェラーゼ断片が挿入されており、二つの断片が接近するとルシフェラーゼの再構成が生じて酵素活性を回復し、発光反応が可能になる。このセンサーを2種類の乳癌細胞株に導入し、メタロプロテイナーゼの強制発現によって、センサーの細胞外ドメインの切断を誘導した。その結果、発光センサーの切断と発光量の減少が確認された。さらに薬剤による内在性のメタロプロテイナーゼの活性化誘導によっても、発光センサーの切断と発光量の減少が確認された。 また、発光センサーのN結合型糖鎖修飾部位に変異を導入して糖鎖修飾を阻害した場合、センサーの細胞膜局在が阻害され、小胞体に蓄積することが確認された。この結果から、構築した発光センサーは内在性のCD44と同様に、N結合型糖鎖が付加されて細胞膜に局在することが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CD44細胞外ドメインの切断が発光量の変化によって測定可能なセンサーを開発し、薬剤による内在性のメタロプロテイナーゼの活性化誘導によって、乳癌細胞内のセンサーの発光量が減少することが確認された。さらに、N結合型糖鎖修飾部位の変異により、発光センサーが小胞体内に蓄積されることを確認した。これらの結果から、発光センサーは内在性のCD44と同様の性質を持つことが示唆され、センサーの有効性を検証することができたと考えたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
N結合型糖鎖修飾阻害剤によるCD44切断への影響を評価し、乳癌細胞での遊走や癌浸潤への影響について考察する予定である。
|
Causes of Carryover |
国際学会への参加を予定していたが、COVID-19感染拡大による影響で、二つの国際学会が中止または延期になったため、次年度での学会発表や論文発表及び追加実験等のために使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)