2020 Fiscal Year Research-status Report
乳癌幹細胞を標的とした治療法探索のための発光プローブの開発
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18K19573
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野田 なつみ 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (30624358)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 乳癌 / CD44 / 生物発光 / ルシフェラーゼ / 癌幹細胞 / 浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌は女性が生涯罹患する確率が最も高い癌であり、40代女性の癌部位別死亡率は1位の癌である。特に、浸潤性乳癌のトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体及びHER2の発現が陰性)は、骨や中枢神経系への転移が多く再発率が高いことから、新規治療法の開発が重要である。 本研究では、乳癌細胞の浸潤や転移を抑制する治療法を開発するために、乳癌の癌幹細胞マーカーである細胞接着分子のCD44に着目している。CD44はその細胞外ドメインの切断が癌細胞の遊走に関与することが報告されており、この切断を発光量で評価可能なセンサーを開発した。この発光センサーは二分割されたルシフェラーゼ断片が挿入されており、これらの二断片の接近によってルシフェラーゼの再構成が生じると酵素活性が回復し、発光反応が可能となる。このセンサーを2種類の乳癌細胞株に導入し、センサー内CD44の細胞外ドメインの切断によって発光量が減少することを確認した。このセンサーを導入した乳癌細胞株を用いて、CD44の細胞外ドメインの切断を抑制する薬剤として糖鎖プロセッシング酵素の阻害剤の一つを見出した。この糖鎖プロセッシング酵素の阻害剤を乳癌細胞株に用いて、細胞外基質の分解量を評価した。細胞外基質の分解量は薬剤の濃度依存的に減少が確認されたことから、この糖鎖プロセッシング酵素の阻害剤の使用によって、乳癌細胞の浸潤が抑制可能であることが示唆された。また、この薬剤投与によって、乳癌細胞の遊走がわずかに抑制される可能性も示唆された。これらの結果から、本研究で評価された糖鎖プロセッシング酵素の阻害剤は乳癌細胞の浸潤を抑制するための新規治療法として適用できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CD44の細胞外ドメインの切断を発光量の変化で測定可能なセンサーを開発し、乳癌細胞に導入して動作確認を行った。CD44の細胞外ドメインを切断するメタロプロテイナーゼを阻害する薬剤を投与して、発光量が上昇することも確認した。また、糖鎖プロセッシング酵素の阻害剤の1つがCD44の細胞外ドメインの切断を阻害することを明らかにし、浸潤能の高い乳癌細胞株において、遊走や細胞外基質の分解を抑制可能であることを示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
CD44の細胞外ドメインの切断を抑制可能な糖鎖プロセッシング酵素の阻害剤を用いて、この薬剤が内在性のCD44細胞外ドメイン切断に影響するかどうかを浸潤能の高い乳癌細胞株を用いて評価する。また、この薬剤による内在性メタロプロテイナーゼに対する発現への影響やその前駆体タンパク質と成熟型タンパク質の割合の変化についても、浸潤能の高い乳癌細胞株を用いて評価する予定である。
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Causes of Carryover |
国際学会への参加を予定していたが、COVID-19感染拡大による影響で参加できなかったため。また、当初の予定より研究成果が増えたため、論文投稿や学会発表のための費用に充てる。さらに、論文受理のために必要な追加実験のための費用として使用する予定である。
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