2018 Fiscal Year Research-status Report
Research into the causes and treatment of olfactory hypersensitivity
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18K19617
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
島田 昌一 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20216063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 誠 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (50633012)
中村 雪子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90548083)
小山 佳久 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40397667)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 嗅覚過敏 / 嫌悪学習 / 嗅覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
嗅覚過敏の多くは、全てのにおいに対して同じ程度に感受性が過敏になるわけではなく、特定のにおいに対して感受性が過敏になり、またその対象となるにおいに対して強い嫌悪感をいだく場合が多い。この嗅覚過敏の発症のメカニズムの1つとして、パブロフの条件づけが考えられる。においと嫌悪刺激が同時にセットで発生すると、においと嫌悪刺激が関連づけられ記憶される。また、そのにおいによって咳嗽、動悸、めまい、頭痛などの自律神経症状が現れ、シックハウス症候群のような嗅覚過敏と不定愁訴の症状が現れる。これらの症状は、におい物質が非常に微量の場合でも起こるため、におい物質自体の毒性や、アレルギー反応が原因であるよりも、むしろ嫌悪学習によって嫌悪反射の回路が形成されたと考えられる。さらに、この嫌悪刺激が社会的ストレスの場合は、学校や職場の建物のにおいがトリガーとなる心的外傷後ストレス障害(PTSD)やパニック障害、引きこもりなどの原因にもなる。 我々はこの嫌悪学習と結びついた嗅覚過敏のメカニズムを解析するためにまずモデル動物の作製を試み、味がほとんど生じないような微量のキシレンを飲水用のボトルに入れ、マウスに投与する方法を用いた。微量のキシレンを含んだ水をマウスに飲ませた後にマウスの腹腔にLiClの溶液を注射し腹痛を惹起した。その後、におい刺激により嫌悪学習が成立したことを確認した。また、次年度にこの嗅覚過敏のモデルを用いた治療薬の開発を試みるため、候補薬剤として各種5-HT3アゴニストの特性を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嗅覚過敏のメカニズムを解析するために、においによる条件づけ嫌悪学習モデル動物を作製を試みた。味がほとんど生じないような微量のキシレンを飲水用のボトルに入れ、マウスに投与した。この方法によってマウスは飲水の際に口腔内で揮発するキシレンのにおいを感知することができる。飲水を制限したマウスに微量のキシレンを含んだ水を与えることにより、マウスは確実にキシレン含有水を飲水する。次に無条件刺激として腹腔にLiClの溶液を注射し腹痛を惹起した。その後、two-bottle choiceにより、キシレンの入った水と普通の水の間でのマウスの嗜好性弁別試験を行い、におい刺激により嫌悪学習が成立したことを確認した。 さらに、次年度にこの嗅覚過敏のモデルを用いた治療薬の開発を試みるため、候補薬剤としての各種5-HT3アゴニストの薬理学的特性をin vitroやin vivoの解析系を用いて調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は以前に、5-HT3受容体のノックアウトマウスにおいて、恐怖記憶の消去学習に障害が生じることを明らかにした。このことで、5-HT3受容体のノックアウトマウスは心的外傷後ストレス障害(PTSD)のモデルになることを示した。においの条件づけによる嫌悪学習や恐怖記憶のメカニズムにも5-HT3受容体が関与しているかどうか5-HT3受容体ノックアウトマウスを用いて解析する。 我々は、条件づけによる慢性疼痛のモデルにおいて、5-HT3受容体アゴニストが痛みを軽減することを明らかにし特許を出願した。においの条件づけによる嫌悪学習や恐怖記憶においても5-HT3受容体アゴニストがその症状が軽減することができるかどうかを解析し、嗅覚過敏の治療薬の開発につなげる。
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Causes of Carryover |
大学の動物飼育施設が改装を行うことが決まり、動物の飼育スペースが一時的に制限された。その分の動物実験の数を減らしたため、当初予定した金額の全額を使用していない。しかし、その替わりに、動物を使用しないin vitroの実験をより多く進めたので、研究全体としては問題なく進んでいる。2019年度は次年度使用額を利用して動物実験をより多く行うことで対応する。
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Research Products
(5 results)