2018 Fiscal Year Research-status Report
発生における周囲環境の探索から導くiPS細胞自己組織化による歯胚エンジニアリング
Project/Area Number |
18K19630
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新部 邦透 東北大学, 大学病院, 助教 (50468500)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
多能性幹細胞であるiPS細胞は,自発的に三次元的な組織・器官を形成する自己組織化能をもつと考えられているが,歯胚への自己組織化誘導は未だ達成されていない。本研究の目的は,iPS細胞の“自己組織化”を利用した歯胚のバイオエンジニアリングである。本研究では,iPS細胞に潜在する歯胚への自己組織化誘導技術として,細胞が発生の過程で周囲環境として認識するであろう「空間サイズ」,「力学的特性」,「細胞シグナル因子」を模倣するアプローチを提案する。これを実現するため,培養基材に任意の培養空間サイズおよび力学的特性を付与することで歯胚としての極性を引き出す方法を試みる。平成30年度は,これまでに確立してきた歯胚発生に関与する遺伝子発現を制御可能なマウスiPS細胞の3次元培養法の検討および,iPS細胞の胚様体を歯原性細胞に分化誘導するための細胞シグナル因子の探索を行った。歯原性上皮細胞への誘導について,各種小分子化合物および細胞シグナル因子を組み合わせた段階的分化誘導(非神経外胚葉系誘導,歯原性上皮誘導,エナメル芽細胞誘導)を試みた結果,マウスiPS細胞からCK14,ameloblastin,amelogenin,enamelin,tuftelin遺伝子を高発現する細胞への分化誘導プロトコルが確立された。今後,このプロトコルおよび歯胚発生関連遺伝子の発現制御iPS細胞株を用い,培養空間サイズ,細胞培養基材の硬さ,培養基材への細胞シグナル蛋白質の固定化が歯胚の自己組織化に及ぼす影響を検討していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初平成30年度には,分化誘導法の検討に加え,細胞培養ハイドロゲル基材を用いて培養空間サイズ,硬さ,細胞シグナルタンパク質の固定化がiPS細胞に及ぼす影響の検討に着手する予定であったが,ゲル基材を滅菌するために必要なプラズマ滅菌器の整備に遅れが生じ,ゲルを用いた細胞培養実験を実施することができなかった。ただし,現在までに,歯胚発生に重要な役割をする遺伝子の発現制御マウスiPS細胞株が樹立できており,さらに各種小分子化合物および細胞シグナル因子を組み合わせることで,マウスiPS細胞の胚様体から段階的に成熟したエナメル芽細胞への分化誘導が可能なプロトコルを確立できている。これらの独自技術が得られたことに加え,現在はプラズマ滅菌器の整備が完了していることから,次の研究段階に進むことが可能な状況にある。したがって,この遅れは次年度に取り戻すことが可能と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られたプロトコルから,iPS細胞を歯原性細胞へ誘導する小分子化合物および細胞シグナルタンパク質の候補が得られたため,本年度は,これら因子の細胞培養ハイドロゲル基材への固定化を試みるとともに,異なるサイズあるいは硬さのゲル基材を用意することで,培養空間サイズ,細胞培養基材の硬さ,培養基材への細胞シグナル蛋白質の固定化がiPS細胞の胚葉体から歯胚への自己組織化に及ぼす影響を検討していく。また,これらの検討で得られる試適条件を用いて動物実験で再生歯の形成を試みる。
|
Causes of Carryover |
当初平成30年度に着手を予定していた,細胞培養ハイドロゲル基材を用いた空間サイズ,力学的特性がiPS細胞の歯原性細胞への分化に及ぼす影響について,細胞培養ゲルの滅菌に要するプラズマ滅菌器の整備が遅れたことに加え,iPS細胞から歯原性細胞に分化誘導する培養条件をさらに検討して確実なものにしてから行うよう研究を進めているため,ゲル基材を用いる実験に要する費用を翌年度分として請求することとした。したがって,次年度使用額は,ゲル基材空間サイズ,硬さ,細胞シグナル蛋白質の固定化が歯胚の自己組織化に及ぼす影響を分子生物学的に検討し,得られる試適条件を用いて動物実験で再生歯の形成の検討に要する費用に使用する。また、従来予定していた分子生物学的検討や動物実験を効率よく実験を進めるために、この程度の使用額は次年度に必要であると考えている。
|