2020 Fiscal Year Research-status Report
Trans-omics study on orofacial and skeletal pain-related signaling and establishment of molecular molecular information for drug discovery
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18K19649
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
飯村 忠浩 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (20282775)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 骨格痛 / 口腔顔面痛 / PTH / 骨粗鬆症 / 神経 / 骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性骨格痛による痛覚過敏モデルとして骨粗鬆症モデルラットを用い、骨粗鬆症治療薬であるPTH製剤による骨格痛軽減作用を論文として報告した(Tanaka T, et al., Sci Rep. 2020 Mar 24;10(1):5346. doi: 10.1038/s41598-020-62045-4)。この研究において、疼痛を軽減する作用は,骨の量を増やす作用よりも早く現れることから、痛みを伝える一次感覚神経に注目して詳細に調べた。その結果、感覚神経細胞にPTHの受容体があること、PTHが作用することにより、神経栄養因子等の発現変動が生じることを明らかにした。PTHは、血中カルシウム量を調節するホルモンで、骨や腎臓を標的とすることがよく知られていたが、神経系にも作用することを発見した。また、この研究では、痛みを脳に伝えるための脊髄後角のミクログリアにも変化が現れることを明らかにし、中枢作用との関連が示さされた。その後の探索から、一次感覚神経節である背側神経節において、神経・マクロファージの相互作用が、慢性疼痛発症にかかわること、PTHの疼痛軽減作用にもこれらの細胞間相互作用が関与することが明らかとなってきた。 また、GWASカタログを活用した疾患関連遺伝子のバイオインフォマティクス解析を駆使して、骨吸収性疾患と神経変性疾患の共通責任遺伝子群を同定する論文を報告した(Lee JW et al., Bone Res. 2021 Feb 10;9(1):11. doi: 10.1038/s41413-020-00134-w)。この成果では、破骨細胞と脳のミクログリアで機能する共通の細胞内シグナルを同定した。ミクログリアは、神経炎症にも関与する。したがって、今回同定した細胞内シグナルは、骨格痛シグナルとしても重要なことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の大学・研究室の移動、移動後の施設改築による学内での研究室の移動、COVID-19が重なり、研究の進捗はやや遅れている。しかしながら、本研究における当初の目的の一部は、論文として発表でき、確実な進捗を示していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初の目的は、口腔顔面領域の主要な感覚神経一次ニューロンである三叉神経節における慢性骨格痛および骨格痛軽減シグナルをトランス・オミクスにより探索することである。より具体的には、慢性骨格痛による痛覚過敏モデルとして骨粗鬆症モデルラットを用い、骨粗鬆症治療薬であるPTH製剤による骨格痛軽減作用に注目する。三叉神経節および腰部脊髄後根神経節における遺伝子発現をトランスクリプトーム解析し、口腔顔面痛と腰痛のバイオシグナルの相違を比較解明することを目指している。腰部脊髄後根神経節にフォーカスを当てた研究成果の一部は、論文として報告できた。また、その後の研究で、これらの変動遺伝子は、神経細胞とマクロファージとの相互作用にかかわることが明らかになってきたため、更なる探索を進める。 また、GWASカタログを活用した疾患関連遺伝子のバイオインフォマティクス解析を駆使して、骨吸収性疾患と神経変性疾患の共通責任遺伝子群を同定する論文を報告した。この成果では、破骨細胞と脳のミクログリアで機能する共通の細胞内シグナルを同定した。ミクログリアは、その発生系譜を破骨細胞と共有し、調節機能の類似性も知られている。またミクログリアは中枢性神経炎症にも関与する。したがって、今回同定した細胞内シグナルは、骨格痛シグナルとしても重要なことが示唆された。今後は、今回同定したシグナルの機能解析を中心に、中枢神経炎症の観点からも、骨格痛シグナルの解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者の大学・研究室の移動、移動後の施設改築による学内での研究室の移動、COVID-19が重なり、研究の進捗はやや遅れている。そのため、次年度使用額が生じた。次年度には、計画通り研究し遂行し、研究費を使用する予定である。
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