2018 Fiscal Year Research-status Report
Runx2による骨におけるI型コラーゲン遺伝子発現制御機構の解明
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18K19654
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小守 壽文 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (00252677)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | Runx2 / I型コラーゲン / 骨芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
I型コラーゲンは、骨の有機基質の90%以上を占める主要なタンパク質であり、2本のα1鎖と1本のα2鎖が3重コイルをつくる。α1鎖はCol1a1遺伝子、α2鎖はCol1a2遺伝子によってコードされている。Col1a1遺伝子では、転写開始点上流2.3 kbが骨芽細胞でのCol1a1発現制御領域であることが明らかにされている。我々は、GFPとCreの融合タンパク質を発現する、2.3 kb Col1a1 プロモーターGFP-Creトランスジェニック(tg)マウスを独自に作製した。このマウスを野生型マウスと交配すると、3段階の発現レベルのtgマウスが得られた。さらに、これらのtgマウスをRunx2fl/flマウスと交配し、Runx2fl/flCreマウスを作製すると、tgマウスの発現レベルに応じて、軽度及び強度の骨量及びCol1a1 mRNAの減少が認められた。しかし、高発現GFP-Creが挿入されたRunx2fl/flCreマウスのGFP-Creの発現レベルは低値であった。これは、Runx2欠失によりCol1a1プロモーター活性が低下、GFP-Cre発現低下につながったと考えられた。すなわち、Runx2により、2.3 kb Col1a1プロモーター活性が制御される可能性が強く示唆された。tgマウスのトランスジーンの挿入部位は14番染色体で1カ所であったが、多コピーが挿入されており、欠失が起こることにより、1系統のマウスから発現レベルの異なる3系統のマウスが出現したことがわかった。交配を続けることにより発現レベルの高い安定したGFP-Cre発現を示すtgマウスの系統を樹立することができた。2.3 kb Col1a1 プロモーターを順次欠失させたレポーターアッセイで、Runx2による発現増強に必要な領域を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2.3 kb Col1a1 プロモーターGFP-Creマウスの全ゲノム塩基配列を決定、トランスジーンの挿入部位を決定したが、挿入部位は14番染色体の1カ所であった。したがって、全ゲノム塩基配列からでは、1系統のマウスから発現レベルの異なる3系統のマウスが出現した理由を解明することはできなかった。そこで、絶対定量PCRを行い、トランスジーンの各領域のコピー数を定量した。3系統のマウス間で、トランスジーンの各領域のコピー数が異なり、染色体上で欠失が起こり、発現レベルの差を生じていることが明らかとなった。Runx2抗体を用いたChIPシークエンスで、2.3 kb Col1a1プロモーター領域でRunx2が結合する配列を網羅した。次にこのうち3箇所の配列に変異を導入したDNA断片を作成、CRISPR/Cas9システムでゲノムDNAと組み替え、変異を導入したマウスを作製した。しかし、ヘテロ変異でもCol1a1発現は低下せず、ホモ変異では胎生早期に致死となった。解析の結果、これはランダムインテグレーションによって変異DNAが挿入され、挿入部位の遺伝子を破壊に起因する表現型であることがわかった。そこで、in vitroのレポーターアッセイでRunx2による転写活性化に必要な部位を特定してから、マウスに変異を導入することにした。2.3 kb Col1a1 プロモーターを順次欠失させたレポーターアッセイで、Runx2による発現増強に必要な領域を特定した。
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Strategy for Future Research Activity |
変異を入れた1kb程度のDNAをゲノムDNAと置換させるのは、CRISPR/Cas9システムでも効率が低かった。そのため、すべての変異をin vivoで導入して、最終的にRunx2による活性化に必要な配列を同定するのは効率が悪いことがわかった。そこで、レポーターアッセイを工夫した結果、C2C12細胞を用いてレポーター活性を検出できることがわかった。そのため、レポーターアッセイで変異を入れる配列を選定したのちに、in vivoで変異DNAとゲノムDNAを置換させることにした。2.3 kb Col1a1 プロモーターを順次欠失させたレポーターアッセイで、Runx2による発現増強に必要な領域を特定した。このRunx2による発現増強に必要な領域をカバーする3種類のオリゴを作製、EMSAを行い、Runx2が結合するか検討し、結合するオリゴに変異を導入することにより最終的にRunx2結合配列を決定する。さらに、変異を導入したレポーターアッセイも行いRunx2による転写活性化に必要な配列を決定する。決定した配列に変異を導入したDNAを合成、その両端のガイドRNAを作製、CRISPR/Cas9のシステムで、変異を導入したDNAをゲノムDNAと置換する。この方法により、効率良くin vivoでRunx2による転写活性化を証明する。
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Causes of Carryover |
in vivoでRunx2による転写活性化に関与する候補配列に変異を導入することにより、Runx2による転写活性化を証明する当初計画であったが、効率が悪いため、in vitroのレポーターアッセイで候補配列を絞り込んでから、in vivoでRunx2による転写活性化を証明することにした。そのため、30年度に必要であった変異マウス作成のためのマウスの購入費、維持費及び変異マウスの解析費が31年度に必要になった。31年度に持ち越した研究費は、変異マウス作成のためのマウスの購入費、維持費及び変異マウスの解析費にあてる。
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