2018 Fiscal Year Research-status Report
An exploratory research for new environmental medicine at dry climate in tropical area: an approach from fungal myceloma research
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18K19684
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
金子 聰 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (00342907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 健太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50508885)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 熱帯乾燥地域 / 公衆衛生 / 感染症 / 真菌菌腫 / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題を展開するに当たり導入疾患として提起する真菌菌腫(mycetoma)は、先進国の保健医療関係者に認識されていない熱帯乾燥地帯に特化した固有の健康問題のひとつであり、真菌(Madurella mycetomatisを主体とする真菌群)の皮膚からの感染が発端となり慢性化する感染症である。感染初期は、無症状であることから、発見が遅れ、進行した状態で見つかることも多い。進行例では、皮膚から皮下組織、そして骨組織にまで浸食し、治療法として、外科的切断術が選択される事も多い。さらに、局所的拡がりのみならず、血流もしくはリンパ流を介し、様々な部位に転移することで重症化し、繰り返しの切断術を要する。神経への浸潤もみられ、四肢の知覚障害や運動障害へと進み、症状として現れる外見の変化から社会的差別や偏見へと繋がることから、社会的排除を強いられ、貧困による負の連鎖を更に助長する深刻な状況を生み出している。この健康問題は、我が国のみならず、国際的にも認知度も低く、診断・治療・予防のいずれにおいても十分な解明がされていない。本研究課題では、スーダン共和国のハルツーム大学マイセトーマ臨床センターを受診する真菌菌腫患者の居住地域を中心に試験的に地域調査を実施する。感染者の過去の行動と行動範囲の確認調査を実施し、行動範囲地域における土壌等の環境サンプリングと真菌菌腫の原因菌腫を中心とした次世代シーケンシングによる環境DNAの測定により、存在する真菌種の確認を行うとともに、真菌菌腫の原因真菌の検出と感染発生地域の特定、さらには、対策の策定、住民への教育・予防に向けた取組に繋げ、地域における環境と予防のための情報収集を介した熱帯乾燥地における新しい環境医学の芽生えから次の段階へと繋げることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スーダン共和国における研究実施に関する手続きに遅れを生じている。2018年度に於いては、同国における調査実施に関する調整を行った。ハルツーム大学マイセトーマ研究センターとの研究協力について、神戸大学及び同国で活動するNPO法人ロシナンテスと連絡を取り、調査実施に向けた方向で検討を進めたが、大統領選挙に伴う政情不安等の問題から、研究活動の展開が思うように出来ない状況にあった。そのため、土壌からの環境DNA調査のための準備など、国内において可能である準備を神戸大学とともに年度内に進めた。具体的には、環境中で低密度に存在すると考えられる対象DNAを効率的に回収するためのプロトコルの改善を行い、従来の10倍以上である3gの土壌サンプルからDNAを回収する大容量化に成功した。今後はさらなる回収量および回収率の改善および現地サンプルでのテストを行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の活動予定としては、スーダンにおける地域調査の実施に関して調整を行うと共に土壌の国内への環境DNA測定については、ハルツーム大学とのMaterial Transfer Agreement(MTA)を取り交わし、土壌検体の持ち込みを行い、測定を目指す。 土壌からの環境DNA分析手法の改善に向けて、以下の二点に取り組む。第一に従来のキットを用いた手法では250mg程度しか処理できなかった土壌サンプル量を、本年度に成功した3gからさらに増加させ、40倍の10g程度まで増加する手法を検討する。第二に、回収率の改善に向けて近年開発された核酸収量増加試薬を利用した回収法を検討する。これらの手法は水中堆積物ですでに実績があるため、土壌にも適用可能であると考えられる。これらの改善により、回収されるDNA量を従来手法の50倍程度まで増加することを目標とする。 また、熱帯乾燥地帯における固有の健康問題解決に向けた取り組みとして、本研究事業終了の新たな研究活動構築に関する検討も開始する。
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Research Products
(1 results)