2018 Fiscal Year Research-status Report
Analytical research on pathogenesis of undetectable synthetic cannabinoids
Project/Area Number |
18K19703
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
吉田 謙一 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (40166947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花尻 瑠理 (木倉瑠理) 国立医薬品食品衛生研究所, 生薬部, 室長 (10224916)
川原 玄理 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40743331)
林 由起子 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (50238135)
前田 秀将 東京医科大学, 医学部, 講師 (60407963)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 危険ドラッグ / 合成カンナビノイド / 異常行動 / ゼブラフィッシュ / カンナビノイド受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
合成カンナビノイド(CB)受容体作動薬は、危険ドラッグとして流通し、突然死、及び、行動異常から交通事故の原因として注目されてきた。また、摂取後短時間で死亡するのに、血中濃度が低いか検出できないことが多く、代謝動態が謎であった。その実態を明らかにするためには、多くの臓器や血液を、複数の時点で採取し、未変性体と代謝物を網羅的に分析する必要があった。さらに、類似構造を持つ複数のCB受容体作動薬の合剤が広く出回っており、いずれかの薬効、あるいは、相互作用の可能性があるが、ラットで、多くの実験条件について試すことは実質上不可能である。そこで、一度に多数の個体を多数の条件に暴露でき、行動を経時的に観察できるゼブラフィッシュを用いる実験を考えた。ただし、研究目的とした合成CB受容体作動薬は、法規制が厳しいため、輸入と取り扱いの許可に時間を要した。2019年2月に、最も重要な研究対象薬であるAB-CHMINACA、AB-PINACAを入手できた。それまでは、法規制されていないCB作動薬を用いて、ゼブラフィッシュの行動解析システムであるダニオビジョンによる行動解析の実験条件を確認する予備実験に終始した。 いっぽう、以前から行っていたCB作動薬MDMB-CHMICAをラットに投与して、ダニオビジョンを用いて行動解析することを試み、これに成功し、論文発表できた。この行動異常は、“のたうち運動”であり、タッピング刺激により誘発される特徴があり、人であれば、事故につながりうるので、詳細な分析が必要と考えられた。MDMB-CHMICAをゼブラフィッシュに投与して、行動異常を観察したが、タッピング刺激をしても、ラットのような異常行動を誘発できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
合成カンナビノイド(CB)受容体作動薬は、危険ドラッグとして流通し、突然死、及び、行動異常から交通事故の原因として注目されてきた。また、摂取後短時間で死亡するのに、血中濃度が低いか検出できないことが多く、代謝動態が謎であった。 まず、ゼブラフィッシュの行動解析装置Daniovisionを用いて、CB受容体作動薬の行動解析のシステムの確立を目指した。CB受容体作動薬は、精神疾患で見られるカタレプシーという一種の無動症を惹起することから、まず、カタレプシーを惹起する代表的な抗精神病薬ハロペリドール(ドーパミンD2受容体拮抗薬)が、容量依存性に、ゼブラフィッシュに無動症を惹起することを確認した。続けて、抗精神病作用が弱く法規制対象外で入手できたCB受容体作動薬であるカンナビジオール、及び、WIN5512-2をゼブラフィッシュに投与して、3時間までの行動、及び、心拍数を分析した。その結果、両者ともに、低濃度で行動量増加、高濃度で行動量減少を認めた。心拍数は低下傾向を認めたが、有意でなかった。 ラットでは、CB受容体作動薬の一つであるMDMB-CHMICAがタッピング刺激により、のたうち運動と無動化を惹起した。そこで、ゼブラフィッシュについても、行動異常とタッピングの影響を観察したが、明らかでなかった。そこで、分単位の感覚で光刺激を繰り返す“明暗試験”を行ったところ、明刺激に対する行動上昇が、反復刺激により低下する“馴化”を認めた。MDMB-CHMICA投与後、明暗刺激の効果は明らかでなかった。いっぽう、また、アルコールは、容量依存性に明暗刺激に対する行動増加を抑制したが、反復するにつれ、効果が低下した。
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Strategy for Future Research Activity |
合成カンナビノイド(CB)受容体作動薬AB-CHMINACA、AB-PINACAの合剤(The Super Lemon等)は、突然死、及び、幻覚・行動異常によると思われる交通事故の原因として有名である。しかし、血中から親物質が検出されない事例、2剤の内一方のみ検出される事例等があり、法医学、中毒学の謎である。2つの薬物には、法規制や輸入手続きの壁があったが、入手できた。私達は、類似薬MDMB-CHMICAをラットに投与すると、徐脈、やや遅れた血圧上昇を認めた。また、本来、ゼブラフィッシュ用のダニオビジョンを用いて、MDMB-CHMICAを投与下ラットに、タッピングが奇妙な“のたうち”運動を誘発することを見出し、報告した。ところが、ゼブラフィッシュにMDMB-CHMICA、AB-CHMINACAを作用させ、ダニオビジョンを用いて分析したところ、ともに、ラットに見られたような行動異常は確認できなかった。そこで、まず、ラットにAB-CHMINACA、AB-PINACAを投与して、行動異常を分析した上で、血液、諸臓器を採取して、親物質と代謝物を分析することにより、これらCB作動薬の代謝や動態を解明し、さらに、分析法を確立する実験を速やかに実施する予定である。そして、従来あまり知らていない“のたうち運動”のような行動異常を分析し、その原因を究明する。まず、CB受容体の内、CB1, CB2のどちらが、行動異常を惹起するかを分析する。続いて、ゼブラフィッシュにAB-CHMINACA、AB-PINACA、及び、両者を投与して、異常行動、死亡率、心拍数を分析する。ラットで検出された2剤の代謝物の内、主要代謝物をゼブラフィッシュに投与して、行動異常の有無を確認する。
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Causes of Carryover |
薬物の購入費用及び分析機器試薬ランニングコストが必要なため。また、microRNA分析を計画しているが、実験計画遂行の遅れにより、次年度に研究費を使用する必要が生じたため。
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