2019 Fiscal Year Research-status Report
死後髄液のNMRモード解析を用いた頭蓋内傷病変の新規検査法の開発
Project/Area Number |
18K19705
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
平川 慶子 日本医科大学, 医学部, 助教 (30165162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金涌 佳雅 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (80465343)
小池 薫 京都大学, 医学研究科, 教授 (10267164)
足立 好司 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00231928)
山崎 峰雄 日本医科大学, 医学部, 教授 (10277577)
早川 秀幸 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (10373052)
柚木 知之 京都大学, 医学研究科, 助教 (50639094)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 死体 / 髄液 / NMR / モード解析 / 頭蓋内傷病変 |
Outline of Annual Research Achievements |
法医実務における死体検案時には髄液検査が日常的に行われているが、その目的はクモ膜下出血等の鑑別にとどまっている。日本では法医解剖率が低く、死亡時画像検査も異状死全例には実施されていないので、死後髄液検査で頭蓋内傷病変の種類や重症度を評価できるようになれば、法医実務上の利用価値は極めて高い。我々は、血清等の試料の性質をNMRモードという物理量で評価する、従来とは全く異なる発想に基づくNMRモード解析法を開発している。 本課題では、死後髄液をNMRモード解析することにより、1)頭蓋内傷病変の傷病名を識別できるか、2)死因が、脳浮腫、脳ヘルニア、脳死、神経細胞傷害、脳循環代謝障害などの重篤な頭蓋内病態であると推定できるか、検討することとした。 令和元年度は、平成30年度に引き続き、倫理委員会への申請に関して、研究者間での協議を継続的に行い、書類をほぼ完成させた。並行して、検体の収集スケジュールやNMR測定手順の確認など、具体的な研究実施計画を練り上げた。 我々が開発した「NMRモード法」は、基本原理は論文等で認知されるところになったが、本法を検査技術として実用化するためには、いくつかの技術的な問題点を解決しなければならないことがこれまでの研究で明らかとなった。令和元年度は、平成30年度に引き続き、アルブミンやヒト標準血清を用いた基礎的実験を行い、生物検体に適したサンプルの前処理、NMR計測条件等、実用化に必要な要素技術の開発を進めると共に、モード解析プログラムの改良も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、ヒトおよびヒト死体由来の試料、病歴情報等を取り扱うため、検体を採取する東京都監察医務院、日本医科大学の研究倫理委員会の承認を経て、実施する必要がある。死後髄液の入手に関しては、本研究の予備的検討を開始する際に東京都監察医務院の倫理委員会の承認を受けている(番号:継29―2)。 日本医科大学においては、学校法人日本医科大学臨床研究審査委員会による承認が必要であるが、本研究は、「死後髄液」のみならず「臨床検体としての髄液」も用いる研究の特殊性から、審査申請前に本学研究統括センターに相談した。本研究で取り扱う死後髄液の研究対象者は全て死者であることから、検体採取の各機関では代諾者たる遺族関係者に説明と同意が必要であるが、身元不明死体の場合や解剖前に遺族と接触できる機会が乏しいことが多いという法医実務の現状から、学校法人日本医科大学臨床研究審査委員会と協議し、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の規定に基づき、研究対象者等が拒否できる機会を保障する措置(オプトアウト)を確実に講ずるものとすることとした。また、日本医科大学武蔵小杉病院および千葉北総病院における「臨床検体としての髄液」の入手に関しては、研究対象者が本研究に参加する前に、説明同意文書を用いて十分説明し、理解を得た上で、本人あるいは代諾者から参加についてインフォームド・コンセントあるいはアセントを得ることとするなど、研究者間で協議を重ねた結果、書類はほぼ完成したが、審査申請には至らなかった。 「NMRモード解析法」の実用化に関しては、以前いくつか技術的な課題を抱えており、令和元年度は平成30年度に引き続き、アルブミン溶液やヒト標準血清を用いて、計測パラメータや解析条件等についての基礎的検討を行うと共に、モード解析用のプログラムの改良も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
学校法人日本医科大学臨床研究審査委員会に申請書類を提出し、委員会にて審査を受けて承認が得られれば、ただちに髄液サンプルの収集を開始し、順次NMR計測を開始する。これまでに検討した結果を踏まえて死後髄液の分析に適した「NMRモード解析法」の詳細な手順を決定し文書化する。 一定数のサンプルについてのNMR計測データが揃ったところで、「NMRモード解析法」を行い、1)頭蓋内傷病変の傷病名を識別できるか、2)死因が、脳浮腫、脳ヘルニア、脳死、神経細胞傷害、脳循環代謝障害などの重篤な頭蓋内病態であると推定できるか、検討する予定である。 以上の結果をとりまとめ、NMRモード解析法を用いた死後髄液検査で、頭蓋内傷病変の種類や重症度を評価できるか、法医実務上としての利用価値を評価する。
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Causes of Carryover |
本研究は、ヒトおよびヒト死体由来の試料、病歴情報等を取り扱うため、検体を採取する東京都監察医務院、日本医科大学の研究倫理委員会の承認を経て、実施する必要があり、令和元年度も、研究者間で協議を続けたが、合意を得るまでに予想以上の手間と時間がかかってしまった。書類はほぼ完成したが、年度内に審査申請手続きを行うことができなかった。 この結果、「死後髄液」および「臨床検体としての髄液」のNMR計測を開始することができず、サンプルのNMR計測およびデータ解析に使用する予定であった費用を次年度に繰り越すこととなった。 倫理委員会の承認が得られ次第、ただちに髄液サンプルの収集を開始し、順次NMR計測およびデータ解析を実施する予定である。
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