2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢者における皮膚潰瘍・褥瘡に対する効果的治療法・予防法の開発
Project/Area Number |
18K19715
|
Research Institution | Hiroshima Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
讃井 真理 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (20412330)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土肥 敏博 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (00034182)
森田 克也 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (10116684)
新川 雅子 広島文化学園大学, 看護学部, 講師 (10711236)
鈴木 茂樹 東北大学, 大学病院, 講師 (30549762)
本山 直世 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (70509661)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 難治性皮膚潰瘍 / 褥瘡 / TRPV3 / 褥瘡治療薬 / 予防法 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者における皮膚潰瘍・褥瘡に対する効果的治療法・治療薬の開発が待たれている.この様な情勢の中,温度感受性チャネルのTRPV3が口腔創傷の治癒に深く関わっている可能性が報告された.本研究はTRPV3に焦点を当て,高齢者の皮膚潰瘍・褥瘡治癒に有用な新しい治療法と新規治療薬開発の礎を構築し,新たな治療戦略の可能性を提供することを目標に研究を遂行している. 平成30年度研究実施計画に沿って,マウスにおける難治性皮膚潰瘍・褥瘡モデルの作製および創傷治癒における薬物の実験を行った. まず実験的皮膚潰瘍・褥瘡モデルの作成を検討した.背部皮膚全層欠損創モデル,糖尿病性難治性皮膚潰瘍モデル(2型糖尿病マウス皮膚全層欠損創モデル),褥瘡様皮膚潰瘍モデルマウス(Turinskyの方法に従い,両側の坐骨神経を切除したのち,マウスの踵部に褥瘡様皮膚潰瘍を発症させた),虚血再灌流障害モデル(Stadlerらの方法を改変して背部皮膚をマグネットで挟み虚血再灌流サイクルを繰り返すモデル)を作製し,再現性の高いモデルを構築することができた. 予備実験として,代表的TRPV3アゴニストや各種栄養因子の合成・遊離に影響することが知られている薬物の影響について検討し,TRPV3アゴニスト(2APB, カルバクロール,)が皮膚欠損創モデルで上皮細胞の増殖の促進,褥瘡モデルで炎症反応の早期終結を認め,皮膚の治癒が促進される傾向を観察した.加えて,脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生誘導が報告されている4-methylcatechol (4-MC)が皮膚欠損創モデルで創傷治癒促進作用を持つ可能性を示す知見を得ている. 難治性皮膚潰瘍・褥瘡及び皮膚欠損創の動物モデルがほぼ確立したことにより,組織傷害の進行を妨げるさまざまな治療法の動物実験が可能となり,治療効果のメカニズム解析が多面的に行う事ができると考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
7月の西日本豪雨災害により被災し,断水,停電,長期間の交通網の遮断等により,研究中の培養細胞が死滅,冷凍保存中の試薬・測定キットが失活してしまったことに加えて,災害後の教育環境等に時間を取られてしまい,長期間(5カ月間)の研究中断を余儀なくされた. 研究開始直後から長期間研究が遂行できない時期が続き,現在,難治性皮膚潰瘍・褥瘡モデル動物の作製と予備実験ではあるが薬物による治癒促進について検証している段階である.加えて,本研究に使用予定で培養中のヒト皮膚表皮細胞株HaCat細胞の死滅に伴い,新しく細胞を購入し培養再開の準備を進めているところである.
|
Strategy for Future Research Activity |
難治性皮膚潰瘍・褥瘡及び皮膚欠損創の動物モデルがほぼ確立したことにより,組織傷害の進行を妨げるさまざまな治療法の動物実験が可能となった.本モデルを使用してTRPV3アゴニストの有効性および創面局所のTRPV3遺伝子ノックダウンやTRPV3阻害薬による創傷治癒の遅延について明確にする. TRPV3アゴニストの作用機序について①細胞増殖,②細胞分化・誘導,③細胞遊走に対する作用を検討する.加えて,④血管内皮細胞,血管平滑筋細胞の増殖,⑤組織液中への血管増殖因子の分泌,⑥毛細血管血流スコープによる血管新生の検証より,創傷における病態生理学的役割について明らかにする. 褥瘡等の難治性創傷の形成と組織傷害の進行に創面局所でのTRPV3の発現抑制或いは機能低下が原因ではないかとの作業仮設の基に,TRPV3発現の詳細な解析とTRPV3阻害物質の産生について検討する.①TRPV3発現抑制が明らかになれば,有害な環境刺激が遺伝子発現に持続的な変化をもたらすメカニズムとしてエピジェネティックな発現調節について発現誘導の時間経過などの多面的アプローチから明確にする.②TRPV3阻害物質についてはHaCat細胞を用いた細胞内Ca2+動態の推移で評価する. 難治性創傷の発症・進行は循環動態であったり感染や栄養等の全身状態であったりと非常に複雑であり,様々な因子を的確に判断してトータルなアプローチを行う必要がある.TRPV3が機能しやすい環境を整える.即ち充分な血行促進と保温効果のあるサプリメントや炎症の速やかな終結が期待できる薬物との併用による相乗効果について明らかにし,より効果的で適切な使用法,投与時期等についての理解を深める. さらに,口腔内の傷が癒えやすいことから,唾液中にTRPV3の生体内活性化物質が含まれる可能性について検証することで,難治性創傷の形成と発展におけるTRPV3の役割を明確にする.
|
Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由:上述のように西日本豪雨災害により,長期間の研究中断を余儀なくされたため. 使用計画:創傷治癒に関係する様々な成長因子測定ELISAキットの購入,ヒト由来ケラチノサイト,血管内皮細胞,血管平滑筋細胞等の購入,TRPV3生体内活性化物質および阻害物質を含む各種薬物の購入に使用する.
|