2018 Fiscal Year Research-status Report
Novel kinesiotherapy for stroke based on epigenetic regulation
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18K19720
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前島 洋 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60314746)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 脳卒中 / リハビリテーション / 運動療法 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストンアセチル化は神経細胞の生存、分化、可塑性にとって重要な神経栄養因子の発現を増強させることが期待される。初年度は正常マウスを対象に代表的なHDAC阻害剤と運動の併用が運動機能、認知機能に関する行動評価と大脳皮質運動関連領野における神経栄養因子とその受容体、シナプス受容体等のシナプス可塑性因子の発現に与える効果について検証を行った。HDAC阻害剤として神経疾患に対して臨床試験が行われ、動物実験においても機能改善が多く報告されているsodium butyrate (NaB)を用いた。当初検討していたsuberoylanilide hydroxamic acid (SAHA)の効果については否定的な報告が散見されることから、同様のHDACを標的とするNaBの使用を優先した。成体マウスをHDAC阻害剤投与と運動の2要因により4群に群分けし、4週間の介入を行った。先行研究において機能改善が報告されている投与量(1.2g/kg)のNaBを1日1回腹腔内投与した。また、運動として1日60分のトレッドミルを用いた走行運動(10m/分)を課した。以上の介入を4週間実施した。 運動機能評価として、Rotarod test、Wire hang testを実施し、認知機能評価としてY字迷路試験、ステップスルー型受動回避試験を実施した。4週間の介入によってこれらの行動評価におけるHDAC阻害、運動の有意な主効果は認められなかった。一方、リアルタイムPCR法を用いた大脳皮質運動関連領野における遺伝子発現の定量において、HDAC阻害は神経栄養因子であるNGFとその受容体であるp75の発現を増強した。運動はシナプス受容体であるNMDA受容体およびアセチルコリン受容体サブユニットの発現を低下させ、GABAA受容体サブユニットの発現を低下させる傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度における生化学的分析として、①神経栄養因子とその受容体のリアルタイムPCR法による遺伝子発現とELISA法による蛋白発現の定量、②エピジェネティクス制御に関するヒストンアセチル化レベル、HAT、HDAC活性の定量、③BDNFの作用による細胞内シグナル伝達(MAPキナーゼカスケード活性)の定量等を計画していた。このうち、実施できた分析はリアルタイム法におけるmRNA発現の定量に留まり、抽出総蛋白、ヒストンを用いたその他の分析については、サンプルの抽出までに留まり、最終データを得るには至らなかった。引き続き抽出サンプルをもとに蛋白レベルでの分析を進める予定である。このため、本研究の進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度における生化学的分析において実施できた分析はリアルタイム法におけるmRNA発現の定量に留まり、抽出総蛋白、ヒストンを用いたその他の分析については、最終データを得るには至らなかった。平成31年度は先ずこれらの抽出サンプルを用いた蛋白レベルでの精査を進める。即ち、①エピジェネティクス制御に関するヒストンアセチル化レベル、HAT、HDAC活性の定量、②BDNFを含む神経栄養因子の作用による細胞内シグナル伝達(MAPキナーゼカスケード活性)の定量について検証を進める。前年度、mRNA発現におけるHDAC阻害と運動の相互作用は認められなかったが、サンプル採取が介入後24時間以降であることが要因として考えられる。運動に依存したmRNA発現の増強は運動終了後数時間後に限局されることが報告されている。これに対し、蛋白レベルでの長期的修飾はこれまでの研究においても多く報告されている。また、平成30年度は予備実験的な位置付けから正常マウスを用いたため、行動評価においては天井効果により介入の効果が生じていないことが推察された。以上を鑑み、今後は蛋白レベルでの精査を進め、その成果をもとに、本研究の目的である脳卒中モデル動物を対象とするHDAC阻害と運動の相乗効果について検証を進める。脳卒中片麻痺モデルラットを作成し、これまでの研究プロトコールに基づき2週間の介入を行う。前年度同様の行動評価、生化学的分析に加えて、片麻痺の神経学的評価、虚血・ペナンブラ領域の組織化学的分析を行い、脳卒中モデル動物におけるHDAC阻害剤投与による運動療法効果の要因について検証を行う。以上を総括し、HDAC阻害下における運動療法が大脳皮質BDNF発現と運動学習効果の増強することを検証し、新たな脳卒中運動療法の可能性を検証する。
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Causes of Carryover |
2、3月分の動物実験施設飼育費の決算が4月以降となることと、動物実験における一部行動評価システムを自作したことにより同行動評価を次年度に実施するため。
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