2018 Fiscal Year Research-status Report
中鎖脂肪酸受容体とケトン体受容体を介した新たな分子栄養シグナル解明への展開
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18K19731
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
木村 郁夫 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80433689)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 中鎖脂肪酸 / ケトン体 / GPR84 / GPR109A |
Outline of Annual Research Achievements |
中鎖脂肪酸やその生体代謝物であるケトン体が、エネルギー源としてではなくシグナル伝達物質として、細胞膜上受容体GPR84やGPR109Aを介して生理機能調節に寄与するのではないかとの作業仮説に基づき、中鎖脂肪酸あるいはケトン体による抗肥満・代謝改善作用の分子機序を明らかにすることを目的に動物・細胞レベルでの検討を行った。 各種中鎖脂肪酸食負荷試験より、中鎖脂肪酸の炭素鎖長の違いにより、それぞれが異なった抗肥満・代謝機能改善作用を示す可能性が認められた。中鎖脂肪酸食が示す抗肥満・代謝機能改善作用に寄与する分子実体として、血中代謝物の解析から、食負荷含有中鎖脂肪酸の炭素鎖長の違いが、中鎖脂肪酸そのものと、肝臓で代謝されて産生されたケトン体からの影響とのバランスに差が生じる可能性が示唆された。加えて、中鎖脂肪酸食負荷に伴い、腸内細菌叢の変動の様子が観察された。また、中鎖脂肪酸の腹腔内投与に伴うグルコース負荷試験の結果、中鎖脂肪酸は耐糖能の改善に影響を与えることがわかり、これも炭素鎖長の違いにより異なった傾向を示した。さらに、GPR84とGPR109Aの安定発現細胞株の作成が完了し、各遊離中鎖脂肪酸のこれら受容体への結合様式を検討したところ、文献値に近い親和性を確認することができた。これらツールおよび遺伝子改変マウスを用いて、引き続き、中鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸受容体およびケトン体受容体を介した分子栄養シグナルの解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中鎖脂肪酸食負荷により、エネルギー代謝機能の亢進の確認および、GPR84やGPR109Aの発現解析及び、発現細胞の作製が完了し、次年度の本格的な中鎖脂肪酸―受容体分子シグナル解析の準備が整ったといえる。したがって、研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、中鎖脂肪酸摂取が脂肪酸受容体を介して生体に及ぼす影響を検討するために、中鎖脂肪酸食負荷によるエネルギー代謝機能変化の検討を行う。そして今年度からは新たに中鎖脂肪酸・ケトン体受容体遺伝子欠損マウスを用いた生体機能への影響とその作用メカニズムについて検討を行う。 具体的な方法については以下に分けた研究計画で実施する。 中鎖脂肪酸食負荷実験(平成31年度):中鎖脂肪酸食(それぞれの中鎖脂肪酸配合比の異なるもの)のマウスへの負荷を行う(長期投与群:2カ月)。長期投与群を用いて、体脂肪重量の測定、各種血中代謝パラメーターの測定、エネルギー代謝関連ホルモンの測定を行い、中鎖脂肪酸食によるエネルギー代謝変化、特に肥満や自律神経系への影響について検討を行う。 脂肪酸受容体機能解析(平成31年度):上述の実験計画により得られた、血中ケトン体・中鎖脂肪酸濃度を指標とし、また、腸内中鎖脂肪酸代謝物群に対し、作成したGPR84、GPR109A安定発現株や、既に作成済みのGPR41、GPR43安定発現株を用いて、その親和性、活性強度について検討を行う。更には発現解析により得られたこれら受容体の発現する細胞での生理活性を明らかにし、GPR84、GPR109AやGPR41、GPR43遺伝子欠損マウス由来細胞を用い、その活性が消失するか確認する。 中鎖脂肪酸食負荷実験(平成31年度):各種脂肪酸受容体遺伝子欠損マウスを用いて長期投与実験および単回投与実験を行うことで、それぞれの生理活性と各種受容体を介した機能との関連付けを行う。
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Research Products
(7 results)