2018 Fiscal Year Research-status Report
協調運動学習下の脳活動解析に基づく運動学習支援エージェントの最適化
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18K19732
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
近藤 敏之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60323820)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 協調運動学習 / エージェント / 脳活動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,二者が協調して運動学習を行う際の脳機能ネットワークの解析に適した協調運動学習課題の設計に取り組んだ.その要求仕様として,(1)ペアを組む相手の熟練度が課題成績および他の新規の相手と組んだ場合の適応性に及ぼす影響を調査できること,(2)運動課題が脳計測にアーティファクトとして影響を及ぼさないこと,の2点を考慮する必要がある.これに対し本研究では,二者協調による物体操作課題を考案した.この課題は,操作対象である物体のダイナミクスと協調相手の操作力から計算される手先反力に基づいて自らの操作力を決定する協調運動学習課題である. 本年度は予備的検討として,力覚提示を省略した視覚フィードバックのみのバージョンで協調運動学習実験を実施し,ペアを組む相手の運動技能の違いが,協調運動学習の運動成績に及ぼす影響を評価した.具体的には,二者がそれぞれ利き手で操作するcursorと仮想バネで繋がれたobjectを協調して動かすことでtargetまで到達させるものである.ただし,各自の最適行動を探索的に学習させるため,objectには未知外力が作用するものとする.また前述の目的を達するため,被験者は初心者(Novice)同士で訓練するNN群と熟練者(Expert)と組んで訓練するNE群に無作為に分ける.協調運動学習の評価指標には,総運動時間とobjectの総移動距離の積を用いる.予備実験の結果,熟練者とペアを組んだ場合(NE群)よりも,自身と同程度のレベルの者とペアで組んで協調運動学習を経験した初心者(NN群)の方が,学習後に,別の初心者と組んだときの成績が有意に高く,汎化性に優れることを明らかにした.この結果は,IEEEの国際会議MHS2018(名古屋大学,12月)にて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設備備品である力覚提示装置の納品に予定以上の時間を要したため,実験課題の開発がやや遅れているが,力覚提示を省略した視覚フィードバックのみのバージョンで協調運動学習実験の予備検討を,当初計画の通り32名の被験者に対して実施し,ペアを組む相手の運動技能の違いが,協調運動学習の運動成績に及ぼす影響を評価した.その結果,熟練者とペアを組んだ場合よりも,自身と同程度のレベルの者とペアで組んで協調運動学習を経験した初心者の方が,学習後に,別の初心者と組んだときの汎化性が高いことを明らかにした.この結果は,IEEEの国際会議MHS2018(名古屋大学,12月)にて報告した.以上より,計画全体としてはおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の二年目は,協調運動学習下の二者の脳活動を,高密度脳波計により同期計測し,機能的ネットワーク解析を実施する.これにより学習者の脳状態を複数のモードとして類別化することを試みる.具体的には,脳機能ネットワークの構造と協調運動課題の成績を対応させて分析することで,試行錯誤モード,協調運動モードなど,ネットワーク構造と運動学習のモードを紐付ける.これにより,患者の脳状態に基づいて最適な支援を提供するリハビリテーション支援システムの実現に向けた知見を得ることを目指す.さらに,一年目に取り組んだ人間同士の協調運動学習実験データを機械学習で分析することで,協調運動学習を最適化するパートナーの動作アルゴリズムを設計する.構築した人工エージェントと新たな被験者をペアにして学習させた際の運動・脳波データを解析し,ヒトーヒト間相互適応とヒトーエージェント間相互適応の特徴を明らかにすることを試みる.
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Causes of Carryover |
本研究で導入した力覚提示デバイス(設備備品)の納品が当初計画より遅れたため,力覚提示デバイスを使用した実験の実施を延期した.それにともない,被験者を雇用するための「人件費」,実験結果を国際会議で発表するための「旅費」,国際会議の参加費を支出するための「その他」の経費に残額が生じた.これらの次年度使用額については,2019年度4月より速やかに当初計画の配分通りに執行する.
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Research Products
(5 results)