2018 Fiscal Year Research-status Report
意欲が運動パフォーマンスを生成する過程の神経基盤の解明
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18K19767
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
西村 幸男 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, プロジェクトリーダー (20390693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 義久 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主席研究員 (30585906)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 意欲 / 中脳辺縁系 / 一次運動野 / 機能的MRI / 側坐核 / 扁桃体 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
意欲・闘志、社会的要因によって左右される精神状態とそれにより制御される身体運動制御機構の神経基盤を解明することを目的として研究を実施している。そのために、意欲に影響を与える社会的要因を実験的に操作する。本年度は、勝敗に対する金銭報酬に着目し、ヒトを対象としてfMRI実験を実施した。実験は合図の提示から決められた時間よりも握力グリップを速く握れば500円または50円得られる条件(報酬条件)と、反応時間の長短によらず金銭が得られない条件(コントロール条件)を設定した。各試行の最初に視覚刺激によって当該試行がどの条件であるかを指示した。 行動解析の結果、報酬条件の方がコントロール条件よりも速くグリップを握る傾向があること、さらに報酬条件の中でも500円の場合が50円よりも速く握ることが示された。また、グリップを握る際の力の強さも、コントロール条件、報酬条件の50円、500円の順に強くなることも分かった。続いてfMRIによる脳活動の解析を行った。まず、腹側中脳と一次運動野が運動の準備と実行の時期に活動していることが分かった。また、腹側中脳は獲得金銭の大きい条件でより強く活動した。さらに、腹側中脳の活動が大きいほど握力グリップを握る力が強いことも分かった。これらの結果は、意欲に関わる中脳辺縁系が一次運動野と協調することで、高い運動パフォーマンスを生み出すことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトを対象としたfMRI実験は27名が参加し、データ解析を行い、国際学会で発表予定である。また現在、投稿論文の執筆に向けて準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトを対象としたfMRI実験において、今年度見出された金銭獲得に伴う運動パフォーマンスの向上に加えて、金銭を失う可能性のある状況での運動パフォーマンスの変化の神経メカニズムを検討する実験を実施する。これにより、ポジティブな意欲とネガティブな意欲の操作を行い、それらに特有の神経基盤を検討する。また、他者による介入が意欲を操作し運動パフォーマンスに与える影響を検討するため、賞賛や叱咤の効果を調べる実験も実施する。現在、賞賛や叱咤を他者が行う動画を撮影し、実験刺激として選定と評価を行っている。完了次第、行動実験によって他者からの評定による運動パフォーマンスへの影響を調べる。さらに、fMRI実験を実施し、他者からの賞賛や叱咤が運動パフォーマンスに及ぼす影響過程の神経基盤を検討する。以上により、社会的要因によって左右される意欲や精神状態と、それによって制御される身体運動制御機構の神経基盤を解明することを目指す。
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Causes of Carryover |
本年度行ったヒトを対象としたfMRI実験で得た新たな知見について、学会発表および専門誌への投稿を予定している。またその準備のために、研究協力者との打ち合わせを行う必要がある。そのため、次年度に出張旅費や投稿に関する費用を支出する必要が生じた。また、新たに他施設において実験を開始するため、その準備にかかる費用や被験者謝金を支出する必要が生じた。
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