2020 Fiscal Year Research-status Report
単球・ミクログリアを介した腸-脳-筋連関による認知症・サルコペニア進展機序の解明
Project/Area Number |
18K19769
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
浅原 哲子 (佐藤哲子) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究部長 (80373512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅波 孝祥 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (50343752)
小谷 和彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (60335510)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 単球極性 / ミクログリア / 腸内細菌叢 / 認知機能 / サルコペニア / 臓器連関 / 腸-脳-筋連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では加齢や生活習慣病に伴う腸内環境の悪化が単球・ミクログリアの極性悪化を来し、腸を起点とした脳や筋肉との病的連関を生じ、認知症やサルコペニアが発症・進展する可能性を検討する。申請者は是まで肥満・糖尿病性認知症における予知バイオ―マーカーとして脳内炎症や動脈硬化に関与する単球・ミクログリア機能(M1/M2極性・TREM2)の病態意義を報告してきた(Diabetes Res Clin Pract 2018; Diabetes Metab 2019; Ann Neurol 2019)。昨年度までで、老化促進による認知症発症モデルマウス(SAMP8)の高脂肪食負荷が、脳内炎症および速筋(前脛骨筋)量の減少を惹起することを認めた。さらに、認知症モデルマウスに対するフラボノイド・タキシフォリン(TX)が海馬のTREM2発現抑制に伴い、脳内炎症低下、脳内血流量改善や脳内Aβ量減少等より認知機能を改善する事を報告した(Proc Natl Acad Sci U S A 2019)。本年度、db/db肥満・糖尿病マウスに対する糖尿病薬・SGLT2投与により、糖代謝(インスリン感受性、インスリン分泌)の改善が認められたことを報告した(BMJ Open Diabetes Res Care 2020)。また、本年度は申請者が作製したTREM2欠損マウスに対し高脂肪食負荷実験を進めている。現在実験動物数は多くないが、野生型およびTREM2欠損マウスへ高脂肪食を負荷したところ、野生型マウスに対して、TREM2欠損マウスの体重増加が抑制されている傾向を認め、現在、解析を進めている。次年度以降、引き続き上記マウスの腸内環境の検討(糞便・盲腸・血清のメタゲノム解析や胆汁酸や短鎖脂肪酸の解析)を行い、腸内細菌叢と認知症・サルコペニア病態との関連解析を推進し、腸-脳-筋連関の分子機構の解明を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、COVID-19の流行に伴い、モデルマウスを用いた基礎研究に遅延が発生したため、2021年度に引き続き基礎検討を継続する。本年度は、下記基礎・臨床研究を推進し、単球・ミクログリア機能(M1/M2極性・TREM2)の認知症進展への影響およびdb/db肥満・糖尿病マウスに対する糖尿病薬・SGLT2投与による、糖代謝改善効果に関する重要な知見を得て報告した。 1.基礎研究:1)db/db肥満・糖尿病マウスに対する糖尿病薬・SGLT2投与により、糖代謝(インスリン感受性、インスリン分泌)の改善が認められたことを報告した(BMJ Open Diabetes Res Care 2020)。2)申請者が作製したTREM2欠損マウスに対し高脂肪食負荷実験を進めている。現在実験動物数は多くないが、野生型およびTREM2欠損マウスへ高脂肪食を負荷したところ、野生型マウスに対して、TREM2欠損マウスの体重増加が抑制されている傾向が認められ現在解析を進めている。3)各マウスの腸内環境の検討(糞便・盲腸・血清のメタゲノム解析、胆汁酸・短鎖脂肪酸・腸管バリア機能の解析)を推進し、加齢や肥満・糖尿病に伴う腸内細菌叢・代謝経路の変化を明らかにする。4)1)~3)の知見および昨年度までに報告した骨格筋萎縮との関連を検討し、脳-筋-腸の病的連関の解明に繋げる。 2.臨床研究:国立病院機構(NHO)多施設共同糖尿病・肥満症コホート(JOMS/J-DOS2)(1937例登録完了)や京都府精華町研究(一般住民健診・高齢者)を構築し、腸内細菌叢と認知症・サルコペニア病態との関連解析を推進している。 以上より、本研究は腸-脳-筋連関の分子機構の解明に向け、COVID-19の流行に伴い当初の予定より基礎研究に遅延が発生しているものの着実に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は是までの知見や研究成績を踏まえ、加齢や生活習慣病に伴う認知症とサルコペニアの進展に影響する単球・マクロファージ・ミクログリアのM1/M2極性異常とその悪化要因となる腸内細菌叢由来トリガー分子の新規同定を含め、腸-脳-筋の病的連関の分子機構の解明を目指す。 1.基礎研究:1)認知症モデルマウス(SAMP8老化マウス、CAA認知症マウス)や肥満糖尿病モデルマウス(db/dbマウス・高脂肪食負荷マウス)を用い、腸内細菌叢(糞便・盲腸・血清のメタゲノム解析、胆汁酸・短鎖脂肪酸・腸管バリア機能の解析)と単球・ミクログリア機能(M1/M2・TREM2)との関連解析の推進により、認知症・サルコペニア進展機序の解明・トリガー因子の同定を施行する。2)上記マウスに、抗酸化作用を有するフラボノイド・タキシフォリン(TX)や肥満・糖尿病改善薬であるSGLT2阻害薬投与による単球・ミクログリア機能(M1/M2・TREM2・単球の網羅的遺伝子発現解析等)と腸内細菌叢(メタゲノム解析等)と関連解析により、腸-脳-筋連関改善の規定因子(腸内細菌由来、単球・ミクログリア関連因子、TREM2)を検討・同定する。 2.臨床研究:これまで構築してきた国立病院機構(NHO)多施設共同糖尿病・肥満症コホート(JOMS/J-DOS2)(1937例登録完了)や京都府精華町研究(一般住民健診・高齢者)のデータ・血清を踏まえ、上記基礎研究で同定した規定因子・バイオマーカー・TREM2の測定により、腸内細菌叢と認知症・サルコペニア病態との関連解析を行い、その病態意義をトランスレーショナルリサーチへと発展させる。 以上より、本研究は加齢や肥満・糖尿病に伴う単球・ミクログリアの極性悪化に関連する腸内細菌代謝物トリガー分子を同定し、腸-脳-筋連関の分子機構を解明に繋げ、その効果的な予防・治療戦略の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
本年(2020年)度、COVID-19の流行に伴い、モデルマウスを用いた基礎研究に遅延が発生したため、2021年度に引き続き基礎検討を継続する。 2021年度使用計画 消耗品:900千円【実験動物関連(抗体、検出キット、高脂肪食等の特殊飼料等)、分子生物学関連試薬(RNA精製関連キット等)、代謝関連測定関連試薬(血糖測定、脂質測定キット等)、培養関連試薬(血清、メディウム)】、人件費:200千円、印刷代等:100千円
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Research Products
(8 results)