2019 Fiscal Year Research-status Report
計算論・量子物理の両面からグラフ最適化・不変量の解析による量子超越性理論の研究
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18K19776
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (80183010)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 統計物理 / 量子計算 / グラフ / マトロイド / 量子優位性 / FPTアルゴリズム / 最適化 / マイナー埋込 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、深さが浅い量子回路(浅層量子回路)における量子超越性が示されたところで、その中でも量子グラフ状態が用いられている。本年度の研究では、初年度の研究でIsingモデル・Pottsモデルの分配関数計算の高速アルゴリズムをベースに、さらにグラフ最適化・不変多項式の観点から、Ising分配関数をEuler部分グラフ列挙を用いて表す方式を高速に実装するBDDアルゴリズムを与えた。Euler部分グラフに着目することにより、偶奇性管理に帰着でき、データ構造等が非常に簡明になるメリットがある。これと関係して、グラフの枝向き付けへと拡張し、有効閉路なし・強連結の双対な性質をもつ枝向き付けを効率よくBDDで計算する効率的アルゴリズムを与えた。Isingモデル関係では、グラフの全枝の細分化を用いた表現の有用性をこれまで示しており、グラフの細分化が浅層量子回路の量子優位性で活用されている点に着目し、枝の向き付けと量子計算の関係を新たに研究開始した。
量子最適化の関しては、最大カットとイジングモデルが等価であることをベースに、古典メタヒューリスティックと量子アニーリングの解の質のよさについて、前者が優れている事例があることを示してきた。今年度の研究では、それを一歩進めて、古典アルゴリズムで量子アニーリングで必要なグラフマイナー埋め込みを最適化することが可能であることを示した。
研究協力者とともに、統計物理・グラフ・マトロイドの不変量の計算に関して、古典アルゴリズムの高速化をFPTの観点から推進してきたところを、これら不変量を計算する量子FPTアルゴリズムという新しいタイプのアルゴリズムに取組んでいる。AmbainisらによるGrover探索アルゴリズムを高次で用いたアプローチをはかっている。グラフそしてマトロイドの向き付けに関する成果を古典アルゴリズムの面で成果を上げ、学術論文誌に論文採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中間年度において、当初計画にそった展開をはかれている。量子最適化と物理のイジングモデル等の不変量をグラフ理論のカットに関する母関数と対応を活用して新規展開をもたらしている。最終年度に向け、量子超越性に関する観点をさらに注力して取り組んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
量子優位性を浅層量子回路からグラフ枝細分化などの意味を持つ部分クラスで解明していくことも含め、新たに利用可能となった量子コンピュータ実機を援用した研究にも取り組む。量子計算と不変量計算の関係について、さらにグラフの木幅などの高度なパラメタを活用することも行う。
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Causes of Carryover |
今年度における研究成果が順以上のようにあげられたが、年度末頃より研究活動が制約される見込みがあったため、次年度に成果発表をより多数するなどの計画更新を行った。さらに、新たに53量子ビットマシンの使用も可能な見込みで、高額な使用料も想定して次年度使用額が生じたところである。
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Research Products
(6 results)