2020 Fiscal Year Research-status Report
計算論・量子物理の両面からグラフ最適化・不変量の解析による量子超越性理論の研究
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18K19776
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (80183010)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 量子コンピュータ / BDD / マトロイド / 量子優位性 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子コンピュータのクラウド利用も開始されたことを踏まえ、その活用も含めた研究推進に取り組んでいる。浅層量子回路における量子超越性については、本年度の研究で、研究協力者の大学院生がexpanderグラフを用いたモデルで、点故障が起こった場合でも量子計算が量子優越性を示す結果を得ている。これについては、本研究から創出された研究として、当該大学院生が引き続き取り組んでいく。本研究では、現在この問題に関して、量子グラフ状態で量子コンピュータの実機を用いた優越性に関する解析を行う実験に取り組んでおり、現在の実機が抱えるノイズの課題がどこまで解決できるかを解明している。今後、それをIsingモデル・Pottsモデルの分配関数計算に発展できるかの検討を試みる。 グラフ最適化・不変多項式の観点からは、Ising分配関数が枝モデルの不変量であるところを、点モデルの場合の結果へと展開し、データ構造としてBDDをフルに活用したアルゴリズムを研究した。具体的には、Eulerフラフの向き付けに関連し、グラフの他の良い性質をもつ枝向き付けへと研究を発展させ、有効閉路なし向き付け・最適化に関連したシンク・ソースの唯一性をもつ向き付けを効率よくBDDで計算する効率的アルゴリズムを与えた。本年度では、BDDを活用してこれまで計算されたことがなかったサイズでの不変量計算を実現した。今後論文としてまとめ、発表を目指す。 量子グラフ状態の場合の量子性検証で、実機を用いたBellの不等式の破れを示した。その方向で新たに出てきたノイズ緩和の諸問題に取り組み、その一部についての解決法も考案した。今後、これをGroverアルゴリズムの拡張などに展開する予定である。この方向性は、従来のAmbainisらによるGrover探索アルゴリズムを高次で用いたアプローチの研究からも出てきたもので、延長年度での成果発表に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで研究してきた理論成果を、量子コンピュータ実機も援用した理論・実験の融合研究として発展させることに取り組み始めたところで、量子コンピュータ導入に研究代表者も関わって推進してきたところであるが、COVID-19の影響でそれにより時間をかける必要があった。その点で、延長年度での成果を出すことで、当初の目標以上の成果を出すことを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
量子コンピュータ実機を利用できるよう環境整備できた点を踏まえ、理論から実験までを対象とする研究に拡張し、それによって当初より目指してきた理論成果をより大きなものにすることに取り組む。延長年度でも引き続きCOVID-19のもとでの研究推進になるところで、クラウド利用等の利点を活用し、また研究協力者との連携を通して研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の関係で、3年目の研究に遅滞が生じており、それに応じて延長年度での成果創出を目指すため。
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Research Products
(4 results)