2018 Fiscal Year Research-status Report
Minimization of universal oritatami system and its limit
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18K19779
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
関 新之助 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (30624944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Fazekas Szilard 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (70725382)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 分子自己組織化 / チューリング完全性 / 最適化 / 共転写性フォールディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は第1にチューリング完全な折り畳みシステム(OriS)の小型化、第2に非チューリング完全OriSの特徴付けである。OriSのチューリング完全性の証明は本課題開始時点で既に完了していたが、本課題の最初の3か月を費やして完成させた論文は国際会議ISAAC2018に受理された。 第1の課題については、弊研究室の生方が折り畳みシステムで任意の2入力2出力(2in-2out)関数を実装する手法を開発。2in-2out関数はセルオートマトンをシミュレート可能なため、生方の手法はチューリングマシンをOrisでシミュレートする新たな手法をもたらす。特記事項としてこの手法は従来の手法に比べて遥かに少ない種類の抽象高分子しか必要としない事があげられる。更に2in-2out関数は可逆計算を可能とするため、これによりOriSによる何らかの意味での可逆計算に道が拓かれた。可逆計算はエネルギー消費を任意に小さくすることが可能であることから、我々が直面するエネルギー問題の観点からも重要である。 第2の課題については、分担者のFazekasおよび弊研究室の丸山、森田とともに高分子を1種類しか用いない(unaryな)折り畳みシステムの計算能力を研究してきた。既存の計算モデルの多くが使用する文字数を1に制限するとチューリング完全性を失う。OriSの重要なパラメータである遅延および価数がともに1の場合、使用する高分子の種類数に関わらずOriSはチューリング完全でないことはDemaineらによって既に証明されている。Fazekasと丸山は遅延が1のunary OriSは価数に関わらずチューリング完全でないことを証明した。またFazekasと森田は価数が1、遅延が2および3のunary OriSがチューリング完全でないことを証明した。これらの成果をまとめた論文は国際会議TAMC2019に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1の課題については、生方が開発した2in-2out関数の統合的実装案により、万能折り畳みシステム(OriS)の実装に必要であった抽象高分子の種類数を現在知られている542種類から100種類以下へと大幅に削減する事に成功した。これは当初想定を遥かに上回る小型化であり、この課題については当初の計画以上に進展していると判断してよいだろう。この統合的実装案は本予算を用いて2018年11月に生方がENS de Lyon (France)においてNicolas Schabanelと共同研究をした際に得られた。本年9月に国際会議STACS2020へ論文を投稿すべく、現在は生方、Schabanelおよび代表者でこの小型化したチューリング完全OriSの動作検証を進めている。 第2の課題については、1種類の抽象高分子しか使用しない(unaryな)折り畳みシステムの非チューリング完全性を証明することを初年度の計画としていたが、残念ながらunary OriSで遅延および価数がある特定の値を取るケースにおいてのみしか非チューリング完全性を証明することが出来なかった。この課題を任せている学生の能力を代表者が過信していたことが主な要因であるが、もう一つの要因としてはOriSの非チューリング完全性の証明が計画段階の想定以上に難しいものであったという事実も挙げられる。この課題についてはやや遅れていると判断せざるを得ない。 結果として本研究全体の進捗としては課題2の遅れを課題1の進捗で補っていると判断し全体としてはおおむね順調に進展していると評価することとする。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1については、生方が発見した任意の2in-2out関数を折り畳みシステムで実装する手法の検証を行い、検証が完了したのち論文を執筆、本年9月に国際会議STACS2020へ投稿する。生方はOriSによるフラクタル構造自己組織化に関する論文で修士号を取得、本年4月よりはNTTデータに勤務している。そのため、検証作業は代表者とNicolas Schabanel (ENS de Lyon)が引き継ぎ、代表者が6月に1か月間ENSに滞在する際にSchabanelとともに完了させる。 課題2については想定よりも遥かに難しい問題であることがわかってきた。その為、研究体制を見直し、特に豊富な研究経験を持つ人員を増強する。上述の通り、代表者はこの6月に1か月間ENSに滞在するが、これは代表者がENSにProfesseur invite affilieとして着任したことの一環である。今後は毎年ENSに赴き研究に従事する。この機会を最大限活用し、ENSにおいてチームを編成、本課題の解決を目指す。本課題は弊研究室の森田(修士課程1年)の修士論文の課題であるため、彼には引き続き比較的取り組みやすいと考えられるケース、例えば遅延が2で価数が2以上の場合など、におけるunary OriSの非チューリング完全性の証明に取り組ませている。丸山(修士課程2年)には森田のサポートに当たらせる。 代表者は本年8月にPolandのWarsawで開催される国際会議DLT2019にて折り畳みシステムに関する招待講演を行うこととなっている。講演ではOriS研究を俯瞰する予定であるが特にチューリング完全OriSの実装には多くの時間を割く。本研究課題の特に2については未解決問題として提唱し、広く訴求する予定である。それにより新たな共同研究者の発掘につながればと考えている。
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Causes of Carryover |
B-Aの差額は分担者のFazekasが2019年度に国際会議で発表する機会が増える事を見越して残したものである。実際にFazekasとの共同論文が国際会議TAMC2019に受理され、私とFazekasおよび共著者である弊研究室の博士前期課程学生、森田と丸山が参加した。またFazekasと彼の学生である星の共著論文が国際会議AUTOMATA2019に受理されており、両名とも参加予定である。AUTOMATA2019はメキシコで開催されるため、大きな渡航費用がかかる。B-Aの差額はこの参加渡航費に充てられる。
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Research Products
(20 results)