2019 Fiscal Year Research-status Report
A new look at security proofs of cryptographic primitives from logic
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18K19780
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩本 貢 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (50377016)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 暗号理論 / 情報理論 / 情報理論的安全性 / 論理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度については,基本的なデータ構造であるスタックの一部(プッシュのみを許すスタック)をもちいてマルチパーティ計算を行う,プライベートPEZプロトコルに関して主に研究を行った(PEZは筒状のお菓子の名称であり,スタックの例えとして用いられている).オリジナルの提案論文 [Balogh et al., Theoretical Computer Science, 2003]では任意の関数を計算するプライベートPEZプロトコルを提案している.この論文では,評価基準である初期文字列長と行動数がそれぞれ,入力数の二重指数,指数のオーダーであった.本研究では,計算できる関数を対称関数に限定すれば初期文字列長と行動数がそれぞれ,指数及び多項式オーダーに大幅に削減できることを明らかにした.この成果は暗号理論に関するトップクラスの国際会議Theoretical Cryptography Conference (TCC2019) に採録された. TCCでは対称関数に対して,初期文字列長と行動数が指数的に削減できることを示したが,任意の関数に対してはオリジナルのBalogh et al.以外の構成法は知られていなかった.そこで我々は,任意の関数に対して,初期文字列長を大幅に減らす方法を考案した.ポイントはBalogh et al.では入力を2進列に変換して計算を行っていたところを,任意の始集合に対して関数が計算できるように拡張したことにある.Balogh et al.では数学的な定義しか与えられていなかったS-functionと呼ばれる関数を,マルチパーティ計算の観点から見直して意味づけを与えた上で,そこのある再帰構造をうまく用いている.この成果は国際会議IWSEC2019のポスターセッションで発表し,best poster awardを受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はデータ構造に制約のあるマルチパーティ計算(Private PEZプロトコル)に関して大きな進展が幾つかあった.Private PEZプロトコルは2003年の提案時から,新しい成果が出なかった分野である.そのような分野でトップクラスの国際会議への論文採録(TCC2019)および,国際会議でのbest poster award (IWSEC2019)を達成したことはインパクトがあり,本研究期間全体の高い達成度を示す成果が出たと考えている.PEZプロトコルは通常のマルチパーティ計算とは異なる構成原理に依っているが,データ構造はスタックという古くから知られているものである.この意味で,計算機科学や離散数学的な対象と,暗号理論の関係を示す興味深い例となっており,本研究の研究対象として極めて相応しい. その他,昨年度から引き続き行っているカードベース暗号についても国際ワークショップを行い,関連の研究者で講演会や勉強会を開き,議論する,など活発な活動を行うことができ,有意義な成果が得られた.これらについては今後発表していく予定である.特に,不可能性や,不正検出などは今後の重要なテーマである. 今年度に新規に行った研究としては,気泡検出器を用いた暗号プロトコルに関する研究がある.この研究は物理的な性質を用いて暗号プロトコル(特にマルチパーティ計算)を行うものであるが,通常の数学的な技術よりも,それらを物理的なもので実行することで,暗号プロトコルに内在する論理的な側面を明らかにすることを期待している. 全体的には,暗号理論の数学的な技術を物理的なもので実現した暗号プロトコルの検討という観点で十分な進展があったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて,これまで得られているカードベース暗号,PEZプロトコルなどの積極的な国際会議・論文誌への投稿を行う.得られた成果を論理学やデータ構造といった観点から整理して,暗号理論の離散数学的側面に光を当てていく. 本年度はPEZプロトコルについてかなりのエフォートを割いたこともあり,カードベース暗号については継続議論となっているものがある.例えば,昨年度得た「AND/XOR/NOR3出力のMPC計算の効率化」におけるラウンド数の圧縮とカード枚数の最適性証明や,「3入力多数決関数に関するPEZプロトコルの大幅な効率化」の他の関数への一般化などがある.これらのテーマについては整理した上で,これまで得られた結果の論文化を行う.PEZプロトコルについては,数学的な難しさもあって,現在得られている「任意の始集合に対する効率的プライベートPEZプロトコル」については議論の整理が必要である.TCC論文のジャーナル化とあわせて進めたい.記法検出器を用いた暗号プロトコルに関しては,まだ研究が始まったばかりであり,プロトコルに許される操作と,それで実現できる暗号プロトコルの整理を行う必要がある. 研究計画全体からの課題としては,論理側の問題を更に追い求める必要があると考える.暗号理論における安全性の証明技法の論理学との関わりについて,より深い議論を行いたい.
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Causes of Carryover |
当初の研究計画より成果があがっており,成果発表および論文投稿費として使用する予定である.
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Research Products
(9 results)