2020 Fiscal Year Research-status Report
A new look at security proofs of cryptographic primitives from logic
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18K19780
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩本 貢 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (50377016)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 論理学 / 情報理論的安全性 / カードベース暗号 / PEZプロトコル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主な成果は以下の4点である: 1)Folk in the Road (FiR)問題と本質的に同じアイディアを用いた秘匿大小比較プロトコル(Millionaires' Problem)を構築し,学術雑誌New Generation Computingに発表した.このプロトコルでは,プロトコルに参加するプレーヤが独自に(他の参加者に知られずに)乱数を生成する秘匿置換モデルを採用している.本論文では秘匿置換を用いることで,効率的にプロトコルが実現でき,さらにFiRに基づいて安全性証明を簡潔に理解できることを明らかにしている.これは本研究のメインテーマである論理学を用いた安全性証明の典型例といえる.また,秘匿置換モデルではしきい値関数を効率よく計算する方法を明らかにし,暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2021)で発表した. 2) 秘匿置換を用いたカードベース暗号は効率的で安全性のシンプルな理解をもたらす一方で,参加者がプロトコルに従うことを要求する(semi-honestモデル).この意味で,秘匿置換を用いたモデルは,従来のシャッフル操作を許すカードベース暗号に比べて安全性の達成レベルが低い.そこで,操作を監視するプレーヤを導入することで,秘匿置換モデルでもプレーヤが任意の不正を検知可能であることを,3入力多数決プロトコルを例にして示し,結果を国際会議ISITA2020にて発表した. 3) 時間ドロボーと呼ばれるパズル(NP完全問題)をベースにしたゼロ知識証明について,従来研究では健全性誤り確率が(1回の試行に対して)1/2であるところを常にゼロにする方法を提案し,SCIS202で発表した. 4) 視覚暗号での不正検知が高い確率で検知出来る方法を開発し,SCIS2021で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論理学に基づいて暗号プロトコルの安全性証明が理解可能となる例としてMillionaires' Problemをカードベース暗号で構築したものが,国際ジャーナルに掲載された.ここで秘匿置換と呼ばれる操作が大きな役割を果たすが,秘匿置換がしきい値関数の秘匿計算に対しても効率的な解を与えることが明らかになったため,SCIS2021で発表した.この成果はSCIS論文賞を受賞することが決定した(SCIS2022で表彰予定).秘匿置換を用いたカードベース暗号の一連の研究で指導学生が博士の学位を取得し,研究指導上も大きな成果が得られた.また,秘匿置換における欠点であった,semi-honestモデルにおけるプレーヤの不正についてもこれを検知する方法を提案し,査読付き国際会議ISITA2020で発表を行った. 秘匿置換を用いたカードベース暗号以外に,時間ドロボー問題を用いた物理的ゼロ知識証明や,視覚型暗号での不正検知など,成果は着実に得られており,査読付き国際会議・論文誌投稿へと研究を進めているところである. 国際会議や論文誌投稿が未完の成果が幾つかあるがため,より研究を形にする必要があるが,研究全体としては順調に進んでいると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
国内会議などで発表して優先権を得た初期的な成果を,査読付き国際会議や論文誌に投稿することが重要と考えている.具体的には以下のような取り組みを行い,成果をまとめたい. 概要1)に述べた「しきい値関数に対する秘匿置換を用いたカードベース暗号プロトコル」を国際論文誌に投稿する. 概要2)や4)で述べたカードベース暗号や視覚暗号の不正検に関する成果は,いずれもプレーヤ数が3に特化した方法であり,一般性の意味で不十分である.一般化を行い,国際会議への投稿を目ざす. 概要3) について,健全性誤り確率がゼロに出来たのは大きな進展であったが,ハサミや立方体といったカード以外の道具を使うところに改善の余地がある.より少ない道具立てで健全性誤り確率をゼロにする方法を検討し,国際会議への投稿を目指す.また,このようにして得られたゼロ知識証明プロトコルの安全性証明を論理学的な観点から検討する.
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Causes of Carryover |
研究自体は順調に進んでいるが,コロナ禍で論文投稿の準備が遅れた.国際会議や論文誌へ投稿予定の論文が数本残っており,その投稿費や,国内学会参加や打合せのための出張費用が必要となる予定である.旅費が予定よりも少なくなっているので,論文をオープンアクセスにして,成果を広く公開する.
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