2020 Fiscal Year Research-status Report
流体迷彩構造の設計を指向した非定常問題に対するトポロジー最適化の開発
Project/Area Number |
18K19781
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉野 正人 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00324228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 雅留太 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (90569344)
鈴木 康祐 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10735179)
秋本 洋平 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20709654)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 流体クローク / トポロジー最適化 / レベルセット法 / 格子ボルツマン法 / 埋め込み境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,CMA-ES(共分散行列適応進化戦略)に基づいた最適解探索法と埋め込み境界-格子ボルツマン法による流体解析を用いた,非定常問題に対するトポロジー最適化を開発した.障害物により生じる流れの乱れを限りなくゼロにすることで流体の透明マント効果を実現する流体クローク(流体迷彩)のトポロジー最適設計を行った.具体的には障害物が無い系での流れ場と,障害物を流体クロークで囲った系での流れ場の差が最小となるよう,流体クロークの設計を行った.設計に必要である,埋め込み境界-格子ボルツマン法を用いた流体クロークの性能評価手法を構築し,その性能評価に基づいてCMA-ESにより最適解(最適化構造)を探索した. 2019年度までにプログラムの開発は全て完了し,実際に最適化計算を実施したところ,評価値の改善が困難であり,その理由として,障害物が存在することにより流体の保存則から,障害物近傍の流速が速くならざるおえず,それはつまり本研究で想定したスキームでは流体のクロークが物理的に不可能であることが示唆された. 2020年度は単純な流体クロークではなく,流体クロークコンセントレータや流体クロークリバーサルなど,障害物を設置せずクロークと構造内での流体制御を目的としたマルチファンクショナル流体メタデバイスの最適化を実施した.障害物を設置しない問題設定のマルチファンクショナル流体メタデバイスの最適設計が可能となるよう,それらの最適化に必要となる追加の目的関数の計算とクロークの評価値とのバランスを考慮した適応度を計算するプログラムを開発した. しかし,固定設計領域内に構造が生じると結局のところ保存則により周辺の流速が速くなるため,評価値が改善することができなかった.障害物の有無に関わらず,構造が生じると現状の最適化問題の設計では流れの乱れを小さくすることが困難であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
保存則により,障害物が流体クロークの性能改善を妨げるため,障害物を設置しない問題設定のマルチファンクショナル流体メタデバイスの最適設計が可能となるよう,目的関数の計算と適応度の設定を行った.また,ポアズイユ流れと一様流れどちらの流れにおいても解析が可能であるようプログラム開発を行なった. しかし障害物がなかったとしても,クローク以外の機能を実現するための構造が流体中に生じると,流体の保存則から周辺の流速が速くならざるおえず,物理的にクロークの性能を実現することが非常に困難であった.そのため,クローク性能と他の1つの性能を実現するマルチファンクショナル流体メタデバイスの設計も困難であることが明らかになった.これらすべての原因は設定した最適化問題では保存則を満たしながら,クローク性能を改善することが不可能である,という物理的な理由に尽きる.障害物の周辺を除き,障害物の前後の空間のみでの評価へ変更してもクロークの評価値の改善はできなかった. 現状では,流体クロークやその関連デバイスを実現することができない問題設定が明らかとなり,本研究目的を達成するには他の物理的なファクターをパラメトリックに変更し,流体クロークの評価値を改善することが可能な環境を明らかにする必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
本質的な解決方法ではないが,2021年度は設計スキームを全体的に見直す予定である.具体的には,レイノルズ数やインレットアウトレットの幅をパラメトリックに変更し,流体クロークが完全に不可能なのか,それともいくつかの条件下では実現できる見通しがあるのかを明らかにする.インレットアウトレットの幅を狭くすることにより,解析する系全体への流入出量を減らし,設計領域内のみで流体を制御し,クローク性能を評価する外部への影響を小さくできないか検討する. また,現在は障害物のみの系においてカルマン渦が生じるレイノルズ数での評価,設計を行なっているが,この条件ではかなり設計が厳しいため,レイノルズ数を低くし,低流速での設計を試みる.狭い流入幅と低レイノルズ数の条件化であれば,カルマン渦が生じなくなるため,研究としてのインパクトはかなり小さくなるが,保存則の影響を設計領域内にとどめ,流体クロークを実現する設計の可否を見極める.
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Causes of Carryover |
次年度に使用額が生じた理由は,コロナ禍により国内外の学会への参加に必要な旅費が不要となったためである.なお,令和3年度は,研究成果発表のための学会参加費ならびに消耗品として使用する予定である.
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