2019 Fiscal Year Research-status Report
身体性の再構築を前提とした異部位触力覚提示の基盤構築
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18K19806
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
梶本 裕之 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80361541)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 触覚 / 力覚 / バーチャルリアリティ / ウエアラブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2つの着眼点、仮説に基づいており、実施される研究はこの仮説を検証するように行われる。本研究の第一の仮説は、「指先で触れる際の触力覚は、指先に提示される必要はないのではないか」というものである。指先を提示対象としなければ、例えば前腕の大面積に提示装置を配置でき、アクチュエータに課せられる制約は劇的に軽減される。こうした異部位提示は、感覚義手の分野で喪失部位の感覚を残存部位に提示するという形で数多く提案されてきたが、振動・圧迫を記号的に伝えるに過ぎなかった。また他の手指や足裏に提示する提案もあるものの、認識や作業にとってもっとも重要な多自由度の力提示は行われておらず、皮膚感覚の分布提示に留まっていた。 本年度は昨年度に続き、異部位への触覚提示(触覚転移)の効果検証を行った。まず指から前腕への触覚転移については、昨年度に引き続き3本指の力情報を方向も含めて提示するシステムを構築した。また頭部への提示に関しては、HMDに内蔵した空気吸引型の触覚提示装置によって複数の指の触覚情報を提示する手法を検討した。さらに背面に多数の振動子を配置することで指に加わる力のみならず、分布的な触覚情報も提示する試みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、本年度は主に初年度に開発した装置を用いた長期装用時の評価を行う予定であった。しかし当初予定していた前腕部への触覚転移以外に、HMDに内蔵することによる顔周辺への転移、背中への転移という新たな手法を見出すにいたり、これらの手法を短期的に評価する方向で研究を行った。その成果は本分野のトップカンファレンスの一つであるACM Siggraph Asiaにおけるデモンストレーション展示へと繋がった。 以上により、当初の予想以上に順調に研究が進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を行うに当たり、当初の目論見とは異なり長期利用による評価はかなり時間を要することが分かった。すなわち「異部位触覚転移はどこまで自己の身体の拡張として自然に受けいれられるか」という問いに対する回答を行うには、VR環境中のみでの実験ではなく、実環境で生活の中での評価をする必要がある。別途開発したグローブ型の触覚センサを用いることで、実際の指先に感じる触覚を他の部位、例えば背中に提示することが可能であると考えており、そのプロトタイプを作成している。今後はこうした装置を中心として長期装用の高価を検証していく。
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Causes of Carryover |
予定していた米国での国際会議Haptics Symposiumがコロナウイルスの影響で延期を決定したため、代替の学会が開催されると思われる12月まで研究期間を延期する必要が生じた。
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