2018 Fiscal Year Research-status Report
Soundscape aestheticization with noise chordization
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18K19829
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西浦 敬信 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (70343275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 雅人 大阪産業大学, デザイン工学部, 准教授 (90511056)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 騒音制御 / 快音化 / 聴覚マスキング / 協和音 / 歯科治療音 |
Outline of Annual Research Achievements |
深刻な社会問題として捉えられている騒音に対し,これまでは受動騒音制御技術(Passive Noise Control(PNC): 物理的な遮音壁による吸音)や能動騒音制御技術(Active Noise Control(ANC): 逆位相の制御信号による騒音相殺)を中心に騒音を削減する方針で研究が進められてきた.しかしながら,音は拡散・回折する性質があり,従来の騒音制御技術等で完全に抑圧することは非常に困難である.また,騒音はそのエネルギーだけでなく音色(周波数特性)も受聴者のストレスを増大する要因となっており,騒音削減後の抑圧信号の周波数特性によっては,小さい騒音エネルギーであっても不快と感じる. そこで,これまでの騒音を削減する考え方に加えて,音楽分野にて研究が進む和音の考え方を取り入れた「騒音環境の快音化」という新しい騒音解決策を提案する.基本的な枠組みとして,騒音の周波数特性に基づき,聴感的に特に不快と感じる高域のピーク周波数を協和音の1音(例えば第5音)として捉え,不足する和音(例えば根音と第3音)を人工的に付与することで,音環境の協和音化に基づく快音化を実現する.さらに騒音の時間変動量を推定し,協和音の考え方を時間周波数領域(和音のコード進行)に拡張することで,実騒音環境のさらなる快音化を実現する. 2018年度は特に滋賀県草津市にある歯科クリニックと連携し,歯科治療音の収集を行い,不快騒音の特徴分析および抽出を行った.その結果を踏まえて,聴覚マスキングにて効果的に不快感を低減可能な周波数帯域の選定を行った.加えて協和音化に向けた快音コードパターンの開発にも着手し,3和音を念頭に快音と感じやすい人工制御音の付与手法の開発を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は,騒音のエネルギーが大きい場合,付与する人工音のエネルギーも増大し,さらに不快感を増大させる可能性があると懸念していた.しかしながら,人間の最小可聴域に基づく聴覚マスキグ現象を積極的に活用し,不快と感じる高域のピーク周波数に対して聴覚的にマスキングすることで不快感を低減し,さらにその消し残り信号に対して協和音化を行い騒音環境の快音化を実現することでこの懸念を払拭することに成功した. 聴覚マスキング現象はこれまで補聴器の分野で研究が行われており,補聴器では聴覚マスキングが生じないよう周囲の環境音を強調してユーザに提示していた.本研究ではこの考え方を逆転の発想で活用し,積極的に聴覚マスキングを発生させることで周辺の騒音が聞き取り難くなる音環境を構築し,騒音の不快感を低減した.さらに,聴覚マスキングにより聴感的に小さくなった騒音に対して協和音化を試み,快音空間の構築を試みた.これら2つの技術を統合することで騒音の快音化という斬新かつ挑戦的な研究に挑んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は騒音の不快感をさらに低減可能な聴覚マスキング信号の開発ならびに協和音化に基づく快音制御音の開発に注力し,試作システムを構築した上で,有効性を検証する計画である.具体的には聴覚マスキング現象を活用し,騒音の不快感を低減可能なマスキング信号の生成を行い,さらに騒音の時間変動量を推定した上で,快音コードパターンを時間周波数領域に拡張することで協和音化に基づく実騒音の快音化を実現する計画である.最後に歯科治療環境において簡易の快音化システムを導入し,滋賀県草津市にある歯科クリニックの協力の下で患者や歯科医師らに実際に使用頂くことで,有効性を検証する計画である.特に劣悪な騒音環境を快音化することを念頭に,挑戦的かつ社会に役立つ研究を展開する計画である.
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Causes of Carryover |
歯科クリニックでの実騒音の収集において,歯科クリニックの多大なるご協力により騒音収集コストを大幅に削減することができた.次年度実施予定の評価実験において有効活用することで,さらに大きな成果の創出へと繋げる計画である.
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Research Products
(8 results)