2018 Fiscal Year Research-status Report
DNAナノ構造の階層的自己組織化による人工細胞核型分子ロボットの構築
Project/Area Number |
18K19834
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20511249)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 分子ロボット / 人工細胞 / 人工細胞核 / ソフトマター物理 / DNAナノテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が開発してきたDNAマイクロゲルの技術を応用して,人工的な細胞核様構造を作り,分子ロボットとするため,DNAマイクロゲル自己組織化技術に関して研究を実施した.DNAマイクロゲルは,化学合成の短鎖DNAで作製したY字型のDNAナノ構造を会合反応によりネットワーク状に集積させてゲル状にして作った.Y字型DNAナノ構造は,将来的に光刺激・分子応答などの機能を搭載する本体のY字部分と,Y字構造の末端にあるSticky-end(粘着末端)からなる.Sticky-endは数塩基の一本鎖配列部位であり,DNAナノ構造同士を連結しネットワーク形成に寄与する.ここでは,マイクロゲルを作るために,2つの方法を利用した. 1つ目の方法では,バルクの水溶液中で核形成と成長によりマイクロゲルを構築した.2つ目の方法では,マイクロサイズの油中水滴の界面に正帯電脂質を配しておくことで,負に帯電したDNAを集積させてカプセル状にゲル化させる.これらの方法を用い,以下のような成果が得られた. (1)DNAマイクロゲルが,マイクロ油中水滴界面で自己組織化する際に,液体的な振る舞いを示しながら,粘弾性的な相分離によって,ポーラスなカプセル構造を作ることが分かり,実験とともに,数理モデルによってその挙動を解析することができた. (2)合成DNAによる細胞核様ゲル構造の形状や強度等の物性の制御を行った.Sticky-endの配列長を長くすることで安定なゲルができることが分かった.一方で,長すぎると,上記のポーラス構造ができにくくなるなど,熱力学的な安定性と,相分離の動的な挙動の間のバランスが重要であることが分かった. (3)DNAに光架橋のための非天然塩基を組み込むことで,DNAマイクロゲルが安定化するとともに,実験のための回収が容易にできるようになることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように,申請時,初年度に予定していた研究を実施し,成果が得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
DNAマイクロゲルの物性(熱力学的安定性等)のコントロールができるようになったので,次は,相転移や相分離の挙動の配列依存的な特性の制御を実施する.つまり,配列による相分離挙動の差を利用した複雑な構造の生成や,光刺激・分子刺激などの機能の付与,および,RNA転写を通した下流の化学反応の制御を検討する.これにより,人工細胞核型分子ロボットの構築と制御が可能になると考えている.具体的には以下の項目を検討する. (1)RNA転写配列をDNAマイクロゲルに組み込むことで,転写後のRNAの定量と,化学反応の制御. (2)光応答性の非天然塩基を組み込むことにより,安定化,不安定化のスイッチを光で行う. (3)非対称構造のDNAマイクロゲルを構築し,複数の機能を配置したり,方向性のある自律運動を実現したりすることで,分子ロボット構築のための基礎技術を確立する.
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