2019 Fiscal Year Research-status Report
超解像度顕微鏡による生きた細胞のDNA損傷修復過程のリアルタイム観察技術の開発
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18K19848
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中村 麻子 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (70609601)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | DNA損傷 / H2AX / 超解像度顕微鏡 / リアルタイムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、従来、細胞を固定しなくては検出できなかった修飾型タンパク質の細胞内局在をリアルタイムにイメージングできる方法を開発することを目的としている。特に本研究では、DNA損傷応答に重要なタンパク質であるリン酸化型ヒストンH2AX(γ-H2AX)に着目し、DNA損傷の発生とその修復過程のリアルタイムイメージングを最終目的として、γ-H2AXのリアルタイムイメージング標識、超解像度広視野レーザー位相差顕微鏡の開発を目指す。2019年度は以下に掲げる研究項目を実施し成果を得た。 【リン酸化型H2AX抗体の金コロイド標識】 研究協力者である高度技術研究所の清水グループが開発した超解像度広視野レーザー位相差顕微鏡は、 80nmの微粒子や口腔上皮細胞の核内構造を観察できるほどの超解像度を有する顕微鏡である。本研究ではリン酸化型H2AXのリアルタイムイメージングを行うために、80nm径の金コロイド粒子によってγ-H2AXに対する抗体を標識することでγ-H2AXをリアルタイムにイメージングできるか検討を行った。まず、80nm径の金コロイド粒子によるγ-H2AX抗体の標識を行った後に、金コロイド標識抗体をセンダイウイルス由来エンベロープにてパッケージングし、細胞導入を試みた。導入後の細胞に対しDNA損傷を誘発し、γ-H2AXに対する免疫染色を行い導入効率およびγ-H2AXの局在変化を検討した。その結果、一定量の金コロイド標識γ-H2AX抗体の細胞質への導入は確認できたものの、標識抗体の核内への移行およびγ-H2AXのDNA損傷部位への局在を検出することはできなかった。 以上の結果は、細胞質の修飾タンパク質のリアルタイムイメージグの現時点で実現可能性であるが、核内タンパク質については、標識プローブの導入方法を再検討する必要があることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでリアルタイムイメージングが不可能であったリン酸化型H2AXを標識し、リアルタイムで観察するための手法として新規超解像度光学顕微鏡に着目した。新規超解像度光学顕微鏡では80nm相当の微粒子のリアルタイムイメージングに成功していることから、γ-H2AXに対する抗体を同径サイズの金コロイド粒子で標識することで、γ-H2AXの細胞内でのリアルタイムイメージングが可能になると予測した。2019年度においては、金コロイド粒子標識γ-H2AX抗体を作成し、細胞への導入に成功した。しかしながら、細胞質までの移行にとどまっており、核膜を通過して核内への移行は認められなかった。一方で、標識γ-H2AX抗体を導入した細胞を超解像度光学顕微鏡でリアルタイムイメージングしたところ、細胞内での金コロイド粒子の検出は出来ていることから、80nm径の標識プローブを用いたイメージングは実現可能であると確認している。 顕微鏡の開発に関しては、引き続きレーザーを含めた一部部品のセットアップに時間を要しており、今後、γ-H2AXイメージングに合わせた開発を加速して行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2020年度も引き続き超解像度光学顕微鏡の設置を行い、早い時期に完成を目指す。しかしながら、昨今のコロナ感染問題のため様々な物品調達に支障が生じていることから、これらについては研究協力者との十分な話し合いを行う。また顕微鏡の設置とは独立して、γ-H2AXのリアルタイムイメージングに適した標識プローブの検討を行う。特に、現在80nm径のコロイド粒子標識抗体の細胞質への導入は実現していることから、さらに小さな粒子での標識や、近年注目されているナノダイヤをQdotsなどの量子プローブによる標識も検討していく。 また、本研究は異分野の融合的研究計画であることから、研究成果やその進捗状況については研究協力者と密に連絡をとり十分な情報共有を行う。また、積極的な学会・研究会参加を行い、研究遂行に向けて尽力していく。
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