2018 Fiscal Year Research-status Report
A revised interpretation of the relationship between d18O in snow and surface temperature over Antarctica
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18K19851
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
栗田 直幸 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (60371738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 一穂 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (00344614)
赤田 尚史 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (10715478)
保田 浩志 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (50250121)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 南極観測 / 宇宙線生成核種 / 宇宙線スペクトル予測モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「降雪タイプ(擾乱性降雪と局地性降雪)の寄与率変化が南極地域における酸素同位体比分布を形成している」という作業仮説の検証に取り組む。そして、降雪タイプの分類には、宇宙線生成核種であるHTOを使った水循環解析というユニークな手法を用いる。本年度は、降雪タイプ分類を行うために必要な環境整備に取り組み、具体的には、(1) 南極大陸の広域における積雪観測の実施、(2) 採取した積雪試料の宇宙線生成核種(HTO, 7Be, 10Be)分析、そして(3)その分析結果を定量的に解釈するための数値モデリング実験を行った。実施した研究を時系列にそって以下に説明する。 採択後(7月から)は、第59次南極観測隊によって採取された積雪試料のHTO分析に着手し、HTO濃度が、南極内陸域に向かって高まるともに、ドームふじ基地周辺で急激に上昇していることを明らかにした。さらに、研究協力者のStepan Poluianov氏(Oulu大学)が開発した宇宙線スペクトル予測モデルを用いて南極地域におけるHTO生成量の計算を行い、観測された地理的特徴の定性的な解釈に取り組んだ。解析結果は、次年度に国内外で行われる研究集会にて報告する予定である。 年度の後半(10月以降)からは、研究代表者が第60次南極観測隊に参加し、昭和基地近くの沿岸域からドームふじ基地までのルート上で積雪採取を行った。第59次で採取された積雪試料では、採取時期の違いに応じてHTO濃度の大きな差異がみられたことから、表層積雪だけでなく、降雪試料から表層20cmの浅層コア試料まで様々な試料を採取し、国内に持ち帰った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、3年計画の初年度であり、南極地域におけるHTOおよび酸素同位体の地理的特徴を把握するための積雪試料採取、および関連データ採取に取り組むことを計画していた。計画通り研究代表者が第60次南極観測隊の内陸旅行に参加し、沿岸域からドームふじ基地がある氷床内部までのルート上で積雪試料を採取し、数値モデルの検証に必要な中性子線観測データを取得することができた。さらに、第59次隊にて採取した積雪試料を使ったHTO分析、数値モデル実験結果との相互比較を通じて予備解析を実施するなど、当初の計画よりも順調に研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(令和1年)は、南極観測にて採取した試料の化学分析を進める。化学分析では、HTOだけでなく、7Beや10Beといった他の宇宙線生成核種の分析にも取り組み、その結果を宇宙線スペクトル予測モデルの最適化に利用する。特に、7Beは半減期が53日と短いため、5月中には分析を完了させる。そして、最適化した宇宙線スペクトル予測モデル使って南極周辺域におけるHTO生成量分布を見積もり、その結果を使って総観規模降雪と局地性降雪のHTO濃度を推定するとともに、観測したHTO分布を使って各降雪タイプの寄与率を計算する。また、研究成果報告についても適宜行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、第59次隊で採取した積雪試料の10Be分析を行う予定であったが、10Be分析に利用する予定だった東京大学タンデム加速器トラブルが発生したため、実験を次年度へと延期した。また、当初予定では、代表者が3月末に南極観測から帰国後に帰国報告会を行うことを計画していたが、分担者が年度末で所属移動する可能性があることが判明したため、報告会の開催を次年度へ延期した。これらの理由から次年度使用額が生じた。
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