2019 Fiscal Year Research-status Report
腸内環境も勘案したミクロシスチン低濃度曝露による慢性中毒発症機構と緩和法の検証
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18K19854
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
清水 英寿 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (10547532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 敏 北海道大学, 農学研究院, 教授 (00271627)
清水 和哉 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10581613)
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30455927)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | PKA / ERK / 細胞増殖 / TNFα / MCP-1 / COX-2 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度での解析により、ミクロシスチン含有水を7週間自由飲水させたラットの肝臓においてコレステロールの蓄積が認められたため、今年度でも引き続き肝臓について解析を行った。結果として、炎症性サイトカインの一種であるTNFα、ケモカインの一種であるMCP-1の発現量がコントロール群と比較して、それぞれ減少傾向にあった。線維化関連遺伝子であるType I Collagen、Fibronectin、α-SMAの発現量についても調べたところ、両群の間でそれら遺伝子の発現量に変化は生じていなかった。結腸についても解析を行ったところ、TNFαの発現量について変化は観察されなかったことから、炎症は惹起されていないことが示唆された。腸管機能については、ミクロシスチン含有水飲水群において異常が認められた。以上から、低濃度ミクロシスチンによる慢性曝露は、肝機能だけでなく結腸の機能にも影響を及ぼすことが明らかとなった。 培養肝癌細胞に対するミクロシスチンの作用機構ついても、昨年度に引き続き検証を行った。その結果、ミクロシスチン処理によって、PKAの活性化が認められた。そのため、PKAに対する阻害剤を用いてその下流に存在する分子の活性化を検証したところ、AMPKの活性化は亢進され、逆にERKの活性化は一部抑制された。さらに、ミクロシスチンによる細胞増殖に、ERKの活性化が寄与していた一方、AMPKの関与は確認できなかった。以上から、ミクロシスチンによる培養肝癌細胞の増殖に、PKA-ERK経路が関わっていることが示された。 培養大腸癌細胞に対しては、ミクロシスチン処理により、大腸癌の進展に関与しているシクロオキシゲナーゼの一種COX-2の発現上昇が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養肝癌細胞および培養大腸癌細胞を用いて、新規作用メカニズムを明らかにしつつある。また、ラットを用いた解析より、肝機能および腸管機能について、慢性ミクロシスチン中毒によって引き起こされる新たな障害を見出せつつある。以上から、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
飲水を介したミクロシスチンの慢性的な低濃度曝露によって腸内細菌叢に変化が生じるのか確認を行い、さらに肝機能や腸管機能の異常に対して相関関係が見出せるのか調べていく。 培養肝癌細胞については、PKAを中心に、その上流に存在する分子をさらに明らかにしていくことで、ミクロシスチンの新たな作用メカニズムの解析を引き続き進めていく。 培養腸管細胞に関しても引き続き、腸の恒常性維持や分化誘導の異常にミクロシスチンがどのように作用しているのか解析を進めていく。
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Research Products
(1 results)