2018 Fiscal Year Research-status Report
Isolation of nitrifiers not via highly-enriched culture using a selective medium
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18K19857
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
諏訪 裕一 中央大学, 理工学部, 教授 (90154632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤谷 拓嗣 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 次席研究員(研究院講師) (50708617)
黒岩 恵 中央大学, 理工学部, 助教 (00761024)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 硝化菌 / 純粋培養 / 亜硝酸酸化細菌 / アンモニア酸化細菌 / アンモニア酸化アーキア / 限界希釈法 / トレーサー法 / GCMS |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで,アンモニア酸化微生物(AOM)の純粋培養は, NH4+を含む選択培地 でAOMを高度に集積し,限界希釈法で分離されてきた。本研究では,選択性を弱めた培地を用いて,高く集積しない培養から既存株とは異なる性質を持つ硝化菌を分離する。 1)0.75mM尿素を含む培地に森林土壌を接種して培養した。NOBは尿素を利用しないにもかかわらずがNO3-が蓄積し,AOMを生産したNO2-を,すぐにNOBが利用したと考えられた。この培養から1株の亜硝酸酸化細菌(NOB),CN101株を分離し,16S rRNA遺伝子とnxrB遺伝子の塩基配列からNitrobacter sp.と同定した。CN101株のNO2-に対するKm値(14.2 uM)は,既知の土壌Nitrobacter属細菌のKm値に比べ1/20以下で,土壌で優占することの多いNitrospira属細菌のKm値に匹敵した。 2)土壌抽出液を含み1.5 mM 15NH4+および0.75 mM 15N-ureaを含む培地を作成し(pH7.6または6.5),畑土壌中のAOMをMPN計数した。生成した15NO2-および15NO3-を脱窒菌法で15N-N2Oに変換しGC/MSで検出した。AOMのMPN計数値は従来の合成無機培地によるMPN計数地を2 - 50倍上回った。硝化positiveの38培養(全289培養中)についてアンモニア酸化細菌(AOB)とアーキア(AOA)の検出をPCRで試み,10培養からどちらかが検出された。pH6.5の培地でAOAが,pH7.6の培地でAOBが検出される傾向があり,新規性の高いAOAが検出された。 こうしたアプローチによって新たな硝化菌が分離される可能性があることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
15N標識化合物を用いることで,分離源の環境に近づけた土壌抽出液(NH4+, NO2-, NO3-を含む可能性がある)入りの培地でも硝化菌の増殖を検出することが可能となった。土壌抽出液入り培地が,より多数の硝化菌を培養させた可能性がある。このことは新規な硝化菌が培養された可能性を示唆する。現在, AOAを含む培養をスケールアップしており,限界希釈法によるAOAの分離も試みている。新規性が示唆されているAOAの分離は挑戦的だが,研究を継続する意義は大きい。 NOBの分離例は少なく,土壌からのNitrobacterの分離例はきわめて限られる。本研究で分離したCN101株のKm値は土壌Nitrobacter属細菌の既知のKm値に比べて大幅に低く,Nitrobacter属細菌が土壌生態系で優占すると考えられているNitrospira属細菌と競合できる可能性が示唆された。これは,生態学的に意義深い知見であるとともに,本研究で提案した硝化菌分離手順の有効性が示された。同様な手順で,新たなNOBと,同時にAOMの分離も試みる計画である。 いくつかの分離操作について,分離源とした培養の全菌数を計数した。また,限界希釈法による分離および純化の操作で得られる,培養本数とそれに対する’positive’本数から,同じ培養での「培養可能な」硝化菌数を統計学的に推定した。全菌数を硝化菌と共存する硝化菌以外の細菌(contaminant)の最大数とみなし,前者と比較することで,分離源中の硝化菌がcontaminantとフロック(細胞塊)を作ることなく完全に分散できていたか(つまり,限界希釈法の前提が成り立っていたか)を推定することができた。この解析は,分離操作を継続すべきかどうかの判断に利用できると考える。 以上のように,本研究は計画どおりかそれ以上に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
Nitrobacter sp. CN101の電子顕微鏡観察から現在の培養中にごく少数ながら形態の異なる細胞が混在していることが示唆されたため,引き続き純化を行っている。純化株について上記と同様にNO2-に対するKm値を求め,さらに,最適な温度,pH, NO2-濃度,および炭酸塩濃度を求める。次に培養をスケールアップしてバイオマスを取得し,DNAを抽出して,ゲノムを解析する。最も系統の近いNitrobacter属細菌と比較し,CN101株が示す低いKm値(低栄養性)の由来をゲノミクスから探る。 Nitrobactor sp. CN101株を分離した培養ではNO2-が蓄積することほとんど無かった可能性があり,この培養では,NOBもAOMもNO2-に暴露される機会がほとんどなく,したがって,NOBはNO2-に親和性が高く,AOMは感受性が高い可能性が考えられる。これが,この培養からAOMの分離に成功しなかった原因であったと推定している。この培養の継代によってAOMが変遷した可能性が高く,共存するAOMを分離することは止め,この経験を活かし,あらたな分離源から両者を分離することにした。 自然界でもNO2-が蓄積することは多くない。われわれは,こうした培養を自然界のモデルととらえ,これまで分離されなかった生態学的に意義のあるAOMを分離する機会と受け止めている。研究の時間は限られるが,培養中での硝化菌の変遷を追跡し,分離を試みる。
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Causes of Carryover |
本研究計画で最も困難と思われた亜硝酸酸化細菌の純粋培養(正確には候補)を,2018年夏に取得した。この「菌株」が純粋培養であることを示すための諸試験,その特徴づけのための実験実施のために資金の使用を集中することにし,設備備品費として計上していた「卓上クリーンベンチ」の購入を一旦中止した。分子生物学的検討,生理試験,および光学顕微鏡での細胞形態観察では純粋培養と判定されたものの,慎重を期し,透過型電子顕微鏡(TEM)による細胞形態観察を行うことにした。また,生理試験で欠かせない機器の修理も必要となった。「卓上クリーンベンチ」購入資金をこの2つの使途に振り替えた。 TEMでの細胞形態観察の結果,若干ながら,亜硝酸酸化細菌以外の細菌も培養に混在する可能性が認められ,さらに純化が必要であるという重大な判断を導くことができた。また,上記機器を使用して分離株の科学的意義を明確にすることができた。使途変更の決断は本研究の進捗に欠かせないものであった。 2018年度第4四半期には「卓上クリーンベンチ」を購入できる資金的余裕が考えられた。この時点で,純粋培養株のゲノム解析を含む分子生物学解析に関連する使途に資金を充当する必要性が明らかになった。そのため,このための資金を2019年度に繰り越すことが本研究の進捗に最良であると判断した。
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Research Products
(1 results)