2019 Fiscal Year Research-status Report
受精時の初期化を乗り越えて次世代胚に伝わる精子の環境因子由来DNAメチル化変化
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18K19860
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
野原 恵子 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, フェロー (50160271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中林 一彦 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 周産期病態研究部, 室長 (10415557)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 次世代影響 / 胚 / DNAメチル化 / 無機ヒ素 / 妊娠期曝露 / 精子 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らはC3Hマウスの妊娠期に無機ヒ素を曝露すると、その雄の子(F1)を親とする次の世代(F2)の肝腫瘍が増加することを発見し、ヒ素群F1精子におけるDNAメチル化修飾のかく乱がF2に受け継がれ肝腫瘍増加に関与すると仮定した。しかし生殖細胞のDNAメチル化は受精後に一旦ほぼ脱メチル化された後に再構成されることから、受精前のDNAメチル化かく乱が受精後の胚にいかに受け継がれるかは不明である。この点を明らかにするために、本研究では精子における環境由来のDNAメチル化かく乱が次世代胚にいかに伝搬するかの検討を目的とした。 実験系として、C3Hマウスの妊娠期に通常の水(対照群)または無機ヒ素を含む水(ヒ素群)を投与して仔世代(F1)の雄を得、対照群F1、ヒ素群F1雄それぞれを他系統(C57BL/6)の雌マウスと交配して妊娠7.5日目に胚を採取し、DNAメチル化のアレル別解析を企画した。昨年度は胚の雌雄の判別をせずにDNAサンプルを調製したが、 今年度はヒ素の影響をより詳細に検出するために、各胚の雌雄の判別を行い雄の胚のみのDNA解析を計画した。さらに胚の遺伝子発現解析のためのRNAの回収も計画した、 まずマウス7.5日胚1個からDNAおよびRNAを調製し、それぞれの定量と、雌雄判別のためのゲノムチェック、RNAからのreal time PCRを行う条件を確立した。その条件に従って、C3Hマウス対照群およびヒ素群F1雄とC57BL/6マウス雌を交配して7.5日胚を得、各胚からDNAとRNAを調製した。ZFY遺伝子のPCRにより雌雄を判別し、雄の胚3~5個のDNAを合わせて1サンプルとし、対照群、ヒ素群それぞれDNA 5サンプルを得た。これらについてReduced representation bisulfite sequencing (RRBS)用ライブラリーを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
7.5日胚1個ずつからDNA, RNAを調製し、胚の雌雄の判別やDNAおよびRNA解析を行う条件を確立し、実験の精緻化が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
C3Hマウス対照群およびヒ素群F1とC57/BL6マウス雌との交配で得た雄7.5日胚のDNAメチル化をアレル別に解析し、雄から胚に伝わったDNAメチル化を明らかする。この結果をこれまでに知見を得た対照群およびヒ素群F1精子のDNAメチル化と比較することによって、精子から胚に受け継がれるヒ素曝露由来のDNAメチル化変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究申請時には雌雄の胚を混ぜて採取する計画であり、初年度はその通りに実験を行った。その後の検討の結果、雌雄の胚を分けて採取することによって解析をより精緻化できる見通しとなり、今年度はさらに雌雄別の胚の採取を行った。そのために次世代シークエンスの実施が次年度となった。次年度は次世代シークエンスおよび関連する解析を行う。
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