2018 Fiscal Year Research-status Report
低環境負荷型技術への実践的活用に向けた高メタノール環境適応C1酵母の戦略的育種
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18K19875
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中川 智行 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70318179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 瑞穂 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50626356)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | C1酵母 / メタノール代謝 / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではC1酵母を用いた低環境負荷型技術の基盤を築くことを目的に、 超高メタノール環境に適応できる「スーパーC1酵母」の育種を視野に入れたC1酵母のメタノール代謝制御機構の解析を行った。 本年度は、高メタノール耐性型C1酵母のメタボローム解析の結果を示し、以前行ったトランスクリプトーム解析の結果と組み合わせることで、高メタノールストレス環境下におけるC1酵母の代謝フローについて示すことができた。その結果、C1酵母は高メタノールストレス下では、グルタチオン等の活性酸素に対する防御機構を強く発現させ、細胞内で生じる活性酸素に対する防御を重点的に行っていることが明らかとなった。また、C1酵母のメタノール代謝における鍵代謝系Xu5P再生経路に関与する遺伝子群を特定し、その発現制御、さらには細胞内局在を示すことで、メタノール代謝におけるペルオキシソーム内でのXu5P再生経路の詳細を示すことができた。 これら業績は、「スーパーC1酵母」の育種に向けた基盤技術として非常に有用であり、来年度以降の実際の分子育種のターゲットをして利用できるものと考えてる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究の当初の目標である高メタノール適応条件下でのC1酵母の細胞機能プロファイリングを示すことができ、その次のステップである高メタノール環境に適応可能なスーパーC1酵母の分子育種に向けた基盤を構築することができたと考えている。 また、本年度の解析を通して、これまで議論の的であったXu5P再生経路に関与する酵素/遺伝子をそれそれ同定することができ、それら遺伝子群のメタノールに対する遺伝子発現制御、さらにはこれら遺伝子群がコードする酵素の細胞内局在までを含めて明らかとし、Xu5P再生経路が全てペルオキシソーム内に局在し、そこに参加する酵素の詳細と代謝系の全容を示すことができた。本経路の解明はC1酵母のメタノール代謝の律速段階であるホルムアルデヒド固定系の活性化に向けた育種の可能性をあたらに提案できるものと考えている。 以上の研究成果から、本年度の研究の進捗状況としては概ね順調に進展しているとみなすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度示すことができた高メタノール適応条件下でのC1酵母の細胞機能プロファイリングを基に、高メタノール環境に適応可能なスーパーC1酵母の分子育種のターゲットを選定する。特に、活性酸素消去系とイノシトール生産系、脂肪酸合成系/β-酸化系に着目し、これらの代謝系に関与する遺伝子群の過剰発現/欠損による高メタノール環境への適応能力について観察し、新たな育種の方向性を提示して行く。 また、高メタノール環境適応株を用いて、メタノールからの物質生産系を構築し、メタノールを出発原料にした新たな発酵生産系の構築を目指し、低環境負荷型技術への応用の可能性を示して行く。
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Causes of Carryover |
次年度の研究において、酵素精製および低温管理が必要な実験が予想され、新たな備品の購入の必要性(クロマトチャンバー)が生じたため、その費用のために繰越をすることにした。
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Research Products
(2 results)