2019 Fiscal Year Research-status Report
微量金属元素の微生物変換プロセスを利用したレアメタル結晶化回収技術の開発
Project/Area Number |
18K19879
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
濱村 奈津子 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50554466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光延 聖 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (70537951)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | アンチモン / 微生物金属代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微生物の金属変換機構に着目し、アンチモン生物還元の代謝機構とバイオミネラル生成プロセスを明らかにすることを目的としている。 当該年度は、鉱山土壌から集積培養したアンチモン代謝活性を示す2から4種の構成種を含む微生物複合系について、異なる電子供与体・受容体の利用や培養スケールなどの生育条件がアンチモン代謝に及ぼす影響を調べた。その結果、2種複合系において乳酸塩を利用した場合に、生育およびアンチモン代謝活性が最も高くなることが示された。本複合系構成種のうち未培養種の系統的近縁株は、腐植物質の構造類似物質であるAQDS (anthraquinone-2,6-disulfonate)や三価鉄を還元することが報告されており、本複合系においても同様の還元活性を示すことも確認された。また、AQDSや三価鉄の共存下では、アンチモン代謝活性やバイオミネラル生成が低下することから、さらに共存金属の影響を調べることが必要である。 上記検証において最も高いアンチモン代謝活性を示した2種複合系について、次世代シーケンサーによりドラフトゲノム情報を解読した。本微生物複合系を構築する共存株の近縁種のうち、すでにゲノム配列が決定されデータベースに登録されている株において、アンチモン代謝に関与していると予測される遺伝子配列と相同性の高い配列は検出されていない。また、新たに取得したアンチモン代謝微生物複合系のドラフトゲノムからも、これまでにアンチモン代謝酵素として同定されているアンチモン酸化酵素(Ano)と相同性の高い配列は検出されておらず、新規な代謝機構による可能性が示唆されている。今後これら複合系を用いて、共存重金属の存在下でのアンチモン還元活性を定量的に測定するとともに、アンチモン代謝に伴う遺伝子発現変動の解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初の計画通りアンチモン還元能を有する複合培養系における構成種の分離培養および分子系統的同定を行い、アンチモン代謝に最適な群集構造を明らかにするとともに、共存金属の影響についても順調に調査を実施している。複合培養系のドラフトゲノム情報からは、本複合系を構成する微生物群の有するゲノム情報が得られており、本研究で目的とする解析には問題がないと判断でき、次年度に予定している遺伝子発現解析の実施も可能である。今後、大量培養や構成種の分離培養が進んだ際には、当初予定していたロングリードによるゲノム全長解析の実施を検討することとする。また、すでに当初の計画通り、異なる構成種によるアンチモン還元代謝の最適化についての検討は実施済みであり、次年度に予定していた共存金属存在下でのアンチモン還元活性測定についても着手している。これらの結果から、概ね当初の目的に沿って順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた、アンチモン還元能を有する複合培養系の構築および活性に最適な複合系の解析データも順調に得られており、複合系ゲノム解読もドラフトゲノム解析済みである。今後は、さらにドラフトゲノムおよびデータベースの近縁種ゲノムの比較解析を進め、金属代謝に関与する遺伝子群の検索を行う。また、アンチモン還元条件下で特異的に発現している遺伝子群をトランスクリプトーム解析により定量的に検出し、これら金属代謝遺伝子のアンチモン代謝への関与を推定することでアンチモン代謝経路に関与する機能遺伝子群を同定する。さらに、共存重金属の存在下でのアンチモン還元活性を定量的に測定するとともに、アンチモン代謝に伴う遺伝子発現変動の解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた複合系のゲノム解析については、コンプリートなゲノムが得られる可能性の高いロングリードでの次世代シーケンス解析を検討していたが、結果的に本解析に必要な量・質のDNA抽出が難しい状況であったため、ショートリード配列によるドラフトゲノム解析を先行して実施した。ドラフトゲノム情報からも、本複合系を構成する微生物群の有するゲノム情報が得られており、本研究で目的とする解析には問題がないと判断できるが、アンチモン代謝に関与する遺伝子発現変動測定の際のトランスクリプトーム解析についてはゲノム解読後に実施するとしたため次年度使用額が生じた。次年度は当初の計画に沿って、トランスクリプトーム解析ををすみやかに実施する。
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