2019 Fiscal Year Research-status Report
人知を超えた乳房X線画像診断能力をもつ革新的AI支援システムの開発
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18K19892
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本間 経康 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30282023)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 計算機支援診断システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、医療画像ビッグデータを基に深層学習などの機械学習を用いて、専門医レベルを凌駕する革新的なX線画像診断を実現するような、新時代の人工知能支援診断(artificial intelligence-aided diagnosis, AID)システムの開発に挑戦している。本年度は、昨年度開発した乳房X線画像用の深層学習を用いたAIDシステムのプロトタイプを用いて、鑑別性能の検証とともに、死後画像診断(autopsy imaging: Ai)への応用を試みた。
1. 腫瘤検出・鑑別AIDシステムの性能検証・改良:深層学習ニューラルネット(deep convolutional neural network, DCNN)を基に、昨年度構築した、乳房X線画像用AIDシステムのプロトタイプを用いて、性能検証と改良を行った。とくに、画像診断結果に加え、病理診断結果も考慮した良悪性鑑別性能向上のため、従来よりも自由度の高いDCNNを用いる改良を施した。その結果、画像診断だけでは良悪性の鑑別が難しい症例群に対して、プロトタイプで達成していた鑑別性能をさらに15%改善することに成功した。これは、鑑別性能だけで比較すると、専門医のそれを30%近く凌駕する画期的高性能である。
2. 死後画像診断への応用:昨年度構築したプロトタイプを、死後画像を用いた溺死鑑別へ応用した。これは、乳房X線画像診断用に事前訓練したDCNNを、死後撮影された胸部X線断層(computed tomography: CT)画像を用いて転移学習し、溺死鑑別を行うAIDシステムのプロトタイプを構築したものである。その結果、約90%の正解率を達成し、法医学的死因究明にも有効であることが示唆された。死後画像のみを用いた死因鑑別は、深層学習の応用として世界初の成果であり、今後の法医学分野への展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画のうち、乳がんの主要な画像所見の1つである微小石灰化群検出の開発は若干遅れている。これは、検出対象が微小であり、プロトタイプで扱える解像度を数倍にすることが要求され、計算量の増大等にも対策が必要なためである。いくつかの対策により、解決の見込みがあり、次年度対応予定である。また、開催ならびに発表予定であった学会等がCOVID-19の影響により中止や延期となったが、次年度の開催、もしくはonline開催の予定である。
一方、病理診断結果を考慮したAIDシステムは読影実験の予備的結果も良好で、専門医の鑑別性能を凌ぐ可能性を示唆しており、予想以上の進展である。また、AIDシステムの法医学分野への応用結果は想定外の進展である。以上を総合して,概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
AIDシステムによる読影予備実験も完了したため、追加実験等を行って、成果をまとめる予定である。また、乳房X線画像上の主な乳がん所見のうち、開発が遅れている微小石灰化群に対するAIDシステムのプロトタイプ実装を急ぐとともに、死後画像診断による法医学的死因鑑別への応用を進める。さらに、COVID-19の影響で開催できなかった国際シンポジウムを開催、もしくはonline開催するのをはじめ、雑誌投稿やonline学会を利用することで積極的に成果発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度末に予定していた、国際学会における資料収集、成果発表等がCOVID-19の影響により開催中止、延期となったため、旅費等の執行ができなかった。また、同じく3月に主催を予定していた国際シンポジウムを延期とせざるを得なかったため、招待者の旅費等を含め、開催費を執行することができなかった。来年度は、延期した国際シンポジウムのonline開催等の準備を進めるとともに、感染拡大状況を見極めながら、対面開催の可能性も検討する。さらに、学会発表よりも雑誌投稿の比率を高めるなど、成果発表方法も状況に応じて適切に検討し、計画的執行に努める。
これに加え、本年度購入した高性能workstationは、新規製品の性能向上に加え、供給量と価格が安定していたため、当初予算よりも低価格で入手可能であった。一方、微小石灰化群検出には、当初予定よりも計算機性能の向上が必要であることが判明したため、次年度追加購入により、予定通り執行可能な見込みである。
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Research Products
(10 results)