2018 Fiscal Year Research-status Report
Modeling a gut flora of a zebrafish by combining experiments, theories and numerical simulations
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18K19893
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石川 拓司 東北大学, 工学研究科, 教授 (20313728)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 腸内フローラ / バイオメカニクス / 数理モデル / シミュレーション / 可視化計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本提案では、輸送論に基礎をなす数理と実験を融合させることで、ゼブラフィッシュの腸内フローラモデルを開発する。 2018年度は、次の3つの保存則を連立することで細菌の周囲環境を予測し、腸内フローラの時空間発展を記述した:①運動量保存則:蠕動運動によって誘起される腸内流動と、栄養素や細菌の移流を記述,②栄養素の保存則:細菌による消費量を考慮し、栄養素や酸素などの物質濃度を記述,③細菌数の保存則:走化性や細菌種間の相互作用を考慮し、細菌数の時間発展を記述。これらの3つの保存則は互いに影響を及ぼし合うため、3つを連立して解くことで初めて精度の高い予測が可能となる。これまでに同様のモデルは提案されておらず、このアイデアは微生物バイオメカニクスを世界最先端で開拓してきた我々の独創である。この研究成果は、国際会議論文(WCB2018)として発表した。 また、ゼブラフィッシュを用いた実験も推進した。ゼブラフィッシュの実験系を確立し、腸内流動の可視化計測に成功した。蠕動運動を制御する手立てについても検討し、アセチルコリンとアトロピンを用いることで、蠕動運動の頻度を制御できることを確認した。さらに、蛍光染色した大腸菌をモデル細菌として腸内に導入し、その運動を計測することに成功した。これらの成果は、国際会議論文(ISABMEC 2018)に発表している。 さらに、大腸菌をモデル細菌とし、細菌がどのように腸壁近傍に留まり続けられるのか、細胞スケールの振る舞いを解析した。その結果、管壁にひだがあることで、細菌が壁近傍に滞在できる時間が減少することが明らかとなった。これらの成果は、物理学で定評のあるPhysical Review E 誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定よりも早くシミュレーターの骨格が完成した。また、実験系の確立も順調に進んでおり、難航が予想された薬剤による蠕動運動の制御に既に成功しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、ゼブラフィッシュを用いた実験課題を強力に推進する。特に、腸内細菌の時空間分布に及ぼす蠕動運動の影響を解明する。蠕動運動の制御には、アセチルコリンとアトロピンを用いる予定である。さまざまな蠕動運動条件下で腸内細菌の分布を可視化計測し、その結果を数値シミュレーション結果と比較検討する。そして、腸内フローラの時空間発展のメカニズムを解明する。また、大腸菌をモデル細菌とし、細菌がどのように腸壁近傍に留まり続けられるのか、細胞スケールの振る舞いを調べる。そして、可視化計測実験と数値シミュレーションを融合させることで、細菌の常駐メカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
2018年度は、数値シミュレーションコードの超並列化による高速化に成功し、想定以下の計算機資源で想定以上の研究成果を上げることができた。また、ゼブラフィッシュの腸内流動の可視化計測も、ソフトウェアを購入せずに、自前のコードで対応できた。そのため、当初の想定よりも少ない予算で研究を遂行できた。2019年度は、大規模な計算機資源を必要とするパラメトリックスタディを実施する予定であり、実験においても新たにラマン顕微鏡を導入する必要があるため、繰り越した予算を2019年度に使用する。
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Research Products
(5 results)