2019 Fiscal Year Research-status Report
Inhibitory effects of supramolecular polyrotaxanes in inflammatory signaling and the application to the treatment of fulminant hepatitis
Project/Area Number |
18K19904
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田村 篤志 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (80631150)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | シクロデキストリン / ポリロタキサン / コレステロール / 炎症 / マクロファージ / 肝炎 / Toll-like receptor |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、コレステロール、生合成中間体、オキシステロールなどの代謝物が細胞の炎症応答に関与することが報告されており、ステロールと免疫系のクロストークが注目されている。また、Toll-like receptor(TLR)を介した刺激の伝達には細胞膜中のコレステロールに富んだ脂質ラフトへの局在が生じることなどから考えると、細胞内のコレステロールは炎症応答の制御において重要な役割を担っていると言える。本研究課題では細胞内のコレステロールに作用する細胞内分解性ポリロタキサンを用いて、コレステロールへの作用が炎症応答に及ぼす影響を明らかにするとともに急性肝炎の治療への応用を検討する。 2018年度の研究において、TLR4により認識されるリポ多糖(LPS)を腹腔内に投与することで肝炎モデルマウスを作成し、ポリロタキサンを用いて肝炎への影響を評価した。その結果、ポリロタキサンによる細胞内コレステロールへの作用が炎症性サイトカインの発現を抑制し、肝炎の発症を抑えることを明らかにした。 2019年度は、in vivoでの治療効果をより高めることをや特定の組織において選択的にポリロタキサンを作用させるための分子設計について検討した。マクロファージはマンノースレセプター(CD206)やスカベンジャーレセプターなど特定の物質を認識して取り込むレセプターを高発現していることから、これらのレセプターに認識される標的指向性ポリロタキサンの合成を行った。具体的には、アニオン性のカルボキシ基を修飾した酸分解性ポリロタキサンの合成を行った。アニオン性のポリロタキサンはマクロファージが発現するスカベンジャーレセプターを介して細胞内へと取り込まれるが、従来の非標的化ポリロタキサンと比較すると約20倍高い取り込みを示すことを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非標的化ポリロタキサンによるLPS誘導性肝炎モデルマウスでの抗炎症作用、ならびに生存期間の延長が起こることを確認しており、さらにin vitroでコレステロールの排泄作用機序についても知見を得ることができた。またカルボキシ基修飾ポリロタキサンの合成方法を確立するとともに、カルボキシ基修飾によるマクロファージへの取り込みの向上についても確認した。カルボキシ基修飾ポリロタキサンについては、コレステロールへの作用、抗炎症作用、LPS誘導性肝炎に対する治療効果が未解明であるため、非標的化ポリロタキサンとの比較を通じて、マクロファージへの標的指向化の効果を明らかにする必要がある。以上のように、いくつかの課題が残されているものの、研究の進展としては順調であると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度に合成方法を確立したカルボキシ基修飾ポリロタキサンが、スカベンジャーレセプター陽性細胞内に対して効率的に取り込まれることを明らかにしたが、in vivoでのマクロファージや末梢血中の単球への取り込みは不明である。また、ポリロタキサンへのカルボキシ基の修飾が体内動態に及ぼす影響も検討する必要があることから、in vivoでのカルボキシ基修飾ポリロタキサンの動態を蛍光標識を施すことで検討する。カルボキシ基修飾ポリロタキサンによる細胞内のコレステロールへの作用を検討するとともに、コレステロールの生合成や取り込みに対して及ぼす影響を明らかにする。また、コレステロールへの作用により、これまでのポリロタキサンと同世に抗炎症作用(炎症性サイトカインの発現抑制)を示すかin vitro、ならびにLPS誘導性肝炎モデルマウスで評価する。最終的には既存の非標的化ポリロタキサンとの比較を通じて、マクロファージへの標的指向化の効果を明らかにし、ポリロタキサンによる炎症性疾患の治療薬としての応用の可能性を検討する。
|
Causes of Carryover |
年度末に起こった新型コロナウイルスの感染拡大の対策として、本学の動物実験施設の使用が制限されたたため、動物実験の一部が実施できない状況であったため、使用予定であった予算を次年度に使用することとしたため。
|