2019 Fiscal Year Research-status Report
A noble strategy for better understanding cancer metastasis and tumor-associated angiogenesis
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18K19908
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
平川 聡史 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任准教授 (50419511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 茂俊 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (50394002)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 血管新生 / リンパ管新生 / 増殖因子 / がん組織 / 転移 / 医工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果の具体的内容:表皮特異的 K14-vascular endothelial growth factor (VEGF)-Aトランスジェニックマウス(TG)の血管及びリンパ管発生を次世代2光子レーザー顕微鏡を用いて観察した。この顕微鏡は、工学分野で研究開発された空間光変調器を応用したものであり、今まで捉えることが出来なかった脈管の病的変化を検出できる新しい技術である。Prox1プロモーターでenhanced green fluorescent protein (EGFP)を発現するTGは、リンパ管を緑色に可視化することが出来る。そこで、本研究ではProx1-EGFP TGとK14-VEGF-A TGを交配し、K14-VEGF-A TG/Prox1-EGFP TGを新たに作成した。このマウスの血管に赤色蛍光のトレーサーを注入し、次世代2光子レーザー顕微鏡で観測したところ、緑色に標識されたリンパ管へ赤色トレーサーが流入する様子が観察され、毛細血管がリンパ管へ吻合する部位が観測された。 意義:血管とリンパ管は、従来それぞれ独立した脈管として考えられている。しかし、本研究では、病的環境において血管とリンパ管が吻合し、互いに交通していることを明らかにした。その医学的意義は、がん組織における転移経路を根本から捉え直し、新たな医学研究と学術基盤を創出する可能性がある。従来、血行性あるいはリンパ行性転移と、がんの転移経路は単純化されている。しかし、本研究の成果により、血行性及びリンパ行性転移が互いの経路を共有し、より複雑な転移網を形成することが示唆される。本研究では次世代2光子レーザー顕微鏡を用いて、今まで捉えることが出来なかった脈管の病的変化を検出し、マウスがん組織において新たな転移経路を見出すことにより、新しい医工学を創出すべく挑戦し、がん研究における新たな学術体系の構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、浜松医科大学において実施されるものである。本学では、光尖端医学教育研究センターの運用に際して研究棟が新築され、さらに従来の研究棟が改築されている。このため、研究室の移動と設置が学内で継続的に行われ、顕微鏡を始めとする精密機器に使用制限が設けられた。このことが理由の一つとなり、当初の予定より本研究の進捗がやや遅れている。また、K14-VEGF-A TGとProx1-EGFP TGを交配し、必要なマウスを十分準備するためには、年度をとおしてマウスの出産と育仔が円滑に行われることが必要である。しかし、昨年度を始め夏の暑さが厳しくなり、動物実験施設の気温が上昇した。この結果、マウスの出産と育仔に影響を生じたため、K14-VEGF-A TG/Prox1-EGFP TGを始めとする遺伝子改変マウスを十分数得ることが出来なくなった。この結果、当初の計画よりマウスの維持と飼育に時間がかかり、本研究が当初よりやや遅れる状況に陥った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究が実施される施設の環境調整を昨年度以上に意識的に行い、マウスの維持と生育が円滑に行われるよう取り組んで行く。特に夏場の飼育に関して、著しい温度上昇を避け、マウスの妊娠・出産・授乳に悪影響を伴うことがないよう準備して取り組む所存である。また、妊娠・授乳時には脱水症状が現れ、円滑な授乳がなされないことがあるため、十分給水を行うよう心がける。マウス皮膚多段階発癌は、20週間にわたる研究実施を要するものであり、その後血管・リンパ管を介した転移機構を明らかにするために12週間まで観察期間を設けて計画を立てている。発癌に要する期間は生物学的に規定されており、一定の時間を要するものの、転移機構は検出感度によって観察期間を短縮して研究を実施できる可能性もある。従って、本研究ではマウスの個体数を十分準備し、観察期間の条件を振ることによって全観察期間を短縮することにも取り組み、研究計画が円滑に実施されるよう準備を進める。
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Causes of Carryover |
当初、2018年度・2019年度に研究計画を立てて研究へ着手したが、浜松医科大学において研究棟の改築が継続して行われ、光尖端医学教育研究センターを運営する研究棟が新築されたた。このため、研究室を移動するとともに、顕微鏡を始めとする精密機器に使用制限が生じたため、本研究活動が当初の予定より遅延することとなった。このため、2019年度に充てていた研究予算が繰り越され、次年度使用額として生じた。 次年度の研究計画は、遺伝子改変マウス K14-VEGF-A TGとProx1-EGFP TGを交配し、K14-VEGF-A TG/Prox1-EGFP TGの系統を維持するとともに、十分数を飼育することにより、次世代2光子レーザー顕微鏡で血管・リンパ管を観測していく予定である。この際、夏の暑さによりマウスの繁殖力が低下するため、十分室温に配慮し、マウスの個体数を維持できるよう取り組む所存である。さらに、マウス皮膚化学発癌に基づく転移モデルを観測する予定であり、発癌から転移まで32週間を要する実験計画を準備している。そこで、本研究では血管・リンパ管の検出感度を高め、がん転移の観察期間を再評価し、可能な限り短縮することによって、研究期間に十分成果を得られるよう取り組んで行く所存である。
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Research Products
(6 results)