2018 Fiscal Year Research-status Report
天然ターゲティング薬物キャリア血小板を活用した革新的再生治療技術の創生
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18K19919
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田畑 泰彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50211371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城 潤一郎 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (60511243)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 血小板 / 再生治療 / 炎症ターゲティングキャリア / 体内細胞動員 / 組織幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、血小板本来のもつ損傷、炎症部位への集積機能を活用して、再生治療を実現する革新的再生治療技術の創生することである。血小板は、物質を取り込むことが知られている。さらに、組織損傷、炎症部位にのみ存在するフィブリンなどの刺激により取り込んだ物質をはき出す性質をもっている。本研究では、再生能力の高い体内に存在する組織幹細胞を炎症部位へ呼びよせる薬物を血小板に取り込ませる。この薬物取り込みを向上させるために、薬物を高分子粒子キャリアに包含する。キャリアに包含することで、より効率よく薬物を血小板に取り込ませる。薬物を取り込んだ血小板を血液中に投与すると血小板は損傷、炎症部位へと自然と集積する(天然ターゲティング)。炎症部位に存在するフィブリンにより、炎症部位で血小板から薬物は放出され、再生能力の高い幹細胞を炎症部位に呼びよせられる。呼び寄せられた細胞によって生体組織の再生修復が実現する。 本研究では、これらの一連の過程がうまく動くかどうかを過程に分けて、材料調製、血小板との相互作用、血小板の体内動態、薬物を取り込んだ血小板による治療効果などを評価していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するためには、血小板への薬物を取り込ませる薬物キャリアの作製、動物からの血小板の単離、薬物キャリアの血小板への取り込みとはき出しの評価、血小板の生物機能の評価、動物を用いた血小板による再生治療効果の評価などが必要である。まず、本年度は血小板に取り込まれる薬物キャリアの調製と選択を行った。ポリ乳酸からなるサイズの異なる粒子を作製した。加えて、粒子をゼラチン、ゼラチン誘導体、およびポリビニルアルコールなどでコーティングした。ウサギあるいはラット血液から血小板を活性化させることなく採取、それに粒子を与えた。その結果、いずれの粒子も血小板に取り込まれた。その中でポリビニルアルコールでコーティングしたポリ乳酸粒子が、血小板の活性化をともなわず、血小板内に取り込まれた。次に、血小板をフィブリンで処理したところ、期待通り取り込まれた粒子は、血小板からはき出されることがわかった。ポリ乳酸粒子に薬物として低分子抗生剤を包含させ、その徐放性を確認するとともに、血小板への取り込みとはき出しを調べた。本研究を遂行するための薬物キャリアの調製と血小板との相互作用を評価する実験系を立ち上げた。一方、SDF-1を含有したポリ乳酸粒子の調製を試みた。その結果、SDF-1の含有を確認できたが、粒子より徐放されたSDF-1の生物活性の低下が問題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた結果を基に、SDF-1 を血小板に取り込ませるための薬物導入キャリアとしてゼラチンあるいは正電荷、真電荷、疎水性残基を化学導入したゼラチン誘導体からなるハイドロゲル微粒子を作製する。血小板への取り込みとはき出しに与えるSDF-1 の含有率とゼラチンおよびゼラチン導入体微粒子のサイズ、微粒子の分解性などを調べる。はき出されたSDF-1 の生物活性をマウス骨髄由来間葉系幹細胞移動能力を調べることにより、評価する。皮膚欠損部を作製したマウスへSDF-1 含有ゼラチンおよびゼラチン誘導体微粒子を取り込んだ血小板を静脈内に投与する。投与後の皮膚組織の再生修復について検討する。欠損部での再生修復評価は、再生組織の組織学的観察、再生過程における組織中の細胞外マトリクスなどの生物マーカー定量により行う。加えて、血小板の集積と機能を生物学的および生化学的検査により評価する。さらに、欠損部位におけるSDF-1量およびその幹細胞移動についての生物活性をディファージョンチャンバーを用いたin vitro細胞培養実験より調べる。
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Research Products
(1 results)