2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of innovative delivery systems of biologics to the lung
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18K19935
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
佐藤 隆 横浜市立大学, 医学部, 講師 (70510436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下里 剛士 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00467200)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 経気道治療 / 吸入療法 / 肺癌免疫療法 / 抗体医薬 / 乳酸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は肺癌吸入治療の臨床応用可能性を探る挑戦的課題である。先行研究で、我々は中分子医薬素材として合成核酸を用いた経気道的免疫療法の有用性を実証しており、本研究では肺癌免疫療法の主役である抗体医薬を用いた経気道的免疫療法の検証を行う点が特色である。平成30年度は、遺伝子組換え乳酸菌を用いた抗体作成技術を応用して、肺癌免疫療法の標的となる免疫チェックポイント阻害作用を有する候補抗体の作成とその生理活性解析、さらに肺癌モデルに対する経気道投与を実施した。作成する抗体は、末梢気道への高い送達性を考慮したマイクロサイズの粒子体としての投与方法を可能とするべく、分子量の調整を行った一本鎖低分子抗体(single chain variable fragment: scFv)としたところが特色である。平成30年度は、臨床で肺癌の一次治療の選択肢として用いられるようになった免疫チェックポイント阻害剤を念頭に、Programmed cell death (PD)- 1阻害作用を有する一本鎖低分子抗体:抗PD-1 scFvの開発をすすめ、in vitroでPD-1分子への結合と阻害作用を確認した。さらに、ルイス肺癌細胞株の同所移植による原発性肺癌モデルを使用したin vivoの検証を行った。本検証で用いた原発性肺癌モデルは50%生存が21日~22日の致死的モデルであるが、抗PD-1 scFv産生乳酸菌菌体破砕物の反復経気道投与により有意な生存率向上が確認されたため、現在追試による再現性を確認するとともに、新たな一本鎖低分子抗体産生乳酸菌(抗PD-L1 scFvおよび抗Cytotoxic T-Lymphocyte-associated protein (CTLA)-4 scFv)の開発を行いin vitro活性ならびにin vivoでの抗腫瘍効果の検証をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、低分子抗体の包埋に適した経気道投与用粒子体の開発に一定の目処を立てることも目標とした。現時点で、乳酸菌菌体破砕物のリポソーム包埋化(片山化学工業社製Lipocapsulater FD-U-PE使用)による最適化を進めている段階で、やや検証に時間を要している。一方で、Lipocapsulaterは経鼻投与あるいは直接気管投与の検証をすすめ、忍容性が高く小動物用エアロネブライザーによる投与可能性の検証は終えており、包埋効率の最適化を平成31年度の上半期にすすめる方針である。肺癌免疫治療に用いる乳酸菌の作成に関しては、生理活性を有する抗PD-1 scFv抗体産生乳酸菌の開発に成功し、実際の肺癌モデルを用いた検証でも有用性が示されたことから、予定通りその他の免疫チェックポイントに関わる標的分子の一本鎖低分子抗体産生乳酸菌の開発に取り組んでいる。現時点で、抗PD-L1 scFv抗体産生乳酸菌、および抗CTLA-4 scFv抗体産生乳酸菌の開発を行い、最適菌株の抽出を行っている段階で、やや検証に時間を要している。抗VEGF-Aあるいは抗VEGF-R2 scFv抗体産生乳酸菌の開発は平成31年度に持ち越してすすめる方針である。一方で、in vitroでの活性やin vivoの検証手段に関する技術的要素は抗PD-1 scFv抗体産生乳酸菌で収得しており、時間的制約の中でも予定通りに実行可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、ヒト臨床で肺癌の一次治療としても用いられるようになったPD- 1阻害作用に着目し、同様の阻害作用を有する一本鎖低分子抗体である抗PD-1 scFvの開発をすすめ、抗PD-1 scFv産生乳酸菌菌体破砕物の反復経気道投与により致死的肺癌モデルの有意な生存率向上を確認した。この結果を受けて、より効果的な経気道投与法に着目したドラッグデリバリーシステムを構築することが本研究の最大の挑戦的課題であるが、さらにその先を見越してヒト臨床試験へ向けた行程の着手に取り組んでいる。具体的には、臨床試験への登用可能性を検証する目的で、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者と本研究内容を発展させる共同研究計画を立案している(現在、米国のR01グラントおよび本邦の国際共同研究加速基金に申請準備中)。この共同研究では、自然発癌モデルを使用した予防的投与の有用性検証を行う予定であり、安価で忍容性の高い乳酸菌由来製剤の臨床応用を飛躍的に発展させる可能性を有しており、挑戦的な前臨床課題の萌芽を果たし、ヒト臨床への還元に向けた挑戦を引き続き継続する方針である。
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Causes of Carryover |
実験計画の見直しにより、当該年度はPD-1 scFv産生遺伝子組換え体の作成に注力し、技術的課題の抽出と最適化をすすめた。この結果を元に次年度に大量の複数種類の菌体調整やサンプル調整を行うこととし、テーブルトップ冷却遠心機(KUBOTA 5500:予算計上890,000円)の設置を次年度に変更したため次年度使用額が生じた。次年度の研究計画に変更はなく、次年度の予算計上分に物品費として次年度使用額分を上乗せし、当初予定の経費(旅費・人件費・謝金・その他経費)の変更は要さず適正に使用する。
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Research Products
(6 results)