2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K19956
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中嶋 英介 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (40838108)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 兵学 / 武士道 / 山鹿素行 / 武教全書 / 大道寺友山 / 日本思想史 / 山鹿流兵学 / 教訓書 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はコロナ禍に配慮しつつ史料調査と研究会発表を並行して行った。 史料調査では大村市歴史資料館にて『武教全書記聞』・『武教全書正解』、『武教三等録』を撮影したほか、長沼流兵学書『兵要録記聞』の現存が判明し、大村藩内にて山鹿流・長沼流兵学が二大潮流をなしていた点が収載史料においても明らかになった。また、江田島海上自衛隊第一術科学校教育参考館にて旧海軍兵学校旧蔵史料の『武教全書聞書』・『北条流系図』などを中心に数十点撮影した。同館で撮影した関連史料はいずれも鷲見文庫内史料の一部であり、山鹿流のみならず北条流・長沼流など膨大な注釈書が現存するため、引き続き調査する必要性を痛感した。このほか萩市立図書館・柳川文書館・八戸市立図書館などへ赴き、『武教全書』の関連書を撮影するとともに国文学研究資料館へも昨年度より引き続き調査している。 以上の調査及び既存史料等を用いて、本年度は90種にものぼる『武教全書』の注釈書を紹介し、基本的な書誌情報を提示した。また、国文学研究資料館特別コレクション山鹿文庫蔵の書籍目録『積徳堂御蔵書目録』を取り上げ目録収載の全史料の紹介、素行存命時成立の『積徳堂書籍目録』との比較検討や現目録との照合を行い、その位置づけを検討した。史料翻刻では真田宝物館蔵『武道初心集』の翻刻掲載が今年度をもって完成し、戦前発行の岩波文庫版との差異や岩波版の誤謬も明らかにした。 研究会発表はwebを軸としつつ、西安日本学研究会にて中国人研究者と情報交換することで、専門分野にとらわれない研究者間交流を行ったほか、東アジア文化交渉学会にて山鹿文庫蔵の『武教全書』と関連史料を紹介した。また、茨城の思想研究会にて兵学書の注釈を調査する意義を訴え、近世における兵学書の位置づけについて発表した。コロナ禍の中ではあるが、webだからこそ可能な研究のあり方を引き続き見出す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
真田宝物館蔵『武道初心集』の翻刻掲載が2年目に終了し、最終年度の予定よりも早く完成した。また、本研究の主軸である『武教全書』の関連史料を雑誌論文にて提示できたのは、山鹿文庫蔵を除いた紹介とはいえ大きな収穫であった。 特筆すべきは八戸市立図書館にて発見した、『武道初心集』(1冊)原本系写本の発見である。『武道初心集』の写本は大半が後世の版本書写である現状を踏まえると、友山原著とされる原本系写本の現存は貴重であり、武士道関連史料の蔵書研究に一筋の光を見出せた。当初の計画であった「武」の概念や系譜の発表は実施できなかったが、山鹿文庫内における複数の書籍目録を手がかりに基礎的情報を明らかにしたほか、数冊の比較検討を行うことで、次年度以降の研究につながる成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も新型コロナウイルス感染の影響が予想されるため、当初の予定であった海外発表はせず、web開催の研究会発表で対応する。また、国文学研究資料館山鹿文庫蔵の『武教全書』及び注釈書の書誌情報を明らかにすべく、検討作業を行う。調査を通して計画当初の予想を上回る兵学関連史料の現存がわかったので、引き続き各地域の図書館等で撮影・閲覧し、調査結果を研究会等にて積極的に発信する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言等の影響を受け、調査を控えたために生じた未使用額である。これらの額は各地への調査、及び研究者との情報交換を行うために支出予定である。
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Research Products
(8 results)