2021 Fiscal Year Research-status Report
エンハンサープロファイリングによる造血器腫瘍の分子病態理解と治療法の開発
Project/Area Number |
18K19960
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三田 貴臣 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (00792475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 真介 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (50295614)
鈴木 智貴 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80834001)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エンハンサー解析 / 遺伝子発現解析 / ゲノム解析 / 造血器腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
二年度においては、成人T細胞性白血病(ATL)、二次性形質細胞白血病(PCL)と多発性骨髄腫(MM)、びまん性大細胞性リンパ腫(DLBCL)を対象として、エンハンサー解析、遺伝子発現解析、ゲノム解析を行った。COVID-19に関連した移動制限・活動制限のため、主にデータ解析並びに予備データの作成に努めた。 まず、ATLに関して、細胞株並びに患者検体を用いた遺伝子発現解析・エンハンサープロファイリングを行い、ATL特異的に発現亢進している遺伝子を同定した。これらのうち、患者検体の多くでCD28-CTLA4、IKZF2、TP73遺伝子領域にスーパーエンハンサーが認められ、幾つかの検体では同領域に遺伝子・染色体異常を伴っていることが確認された。これら3つの遺伝子は、T細胞の発達あるいは腫瘍細胞の増殖に関与していることが知られており、スーパーエンハンサー形成並びに遺伝子異常がATLの病態と関わっていることが示唆された。一方、ATL細胞において特異的に発現している転写産物の解析も行い、新規long non-codingを同定した。これらに関して、遺伝子ノックダウンや強制発現系を用いて機能解析を行っている。 次に、PCLに関して、患者検体を用いて全ゲノム解析、遺伝子発現解析、シングルセル解析を行い、MMからPCLへ発展する段階で認められる遺伝子異常を同定した。興味深いことに、MMにおいて以前から知られている1q21領域の増幅がPCLのサンプルにて認められ、これらがPCLの病態形成、並びにクローン進化に関与している可能性が示唆された。 加えて、DLBCLの多数患者検体を用いて全エキソームシーケンス解析を行い、遺伝子異常と病態との関連性について解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
二年度においても、初年度に続いてCOVID-19に関連した移動制限・活動制限が継続したため、当大学(名古屋市立大学)における直接の研究活動が限定された。そのため、主にはデータを用いたバイオインフォマティクス解析、並びに別施設(シンガポール国立大学)での共同研究を通しての機能解析に努めた。これによって一定の成果は上げているが、当初の申請計画からは遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度、二年度に行う予定であった研究計画を遂行する。これまでに同定した遺伝子異常、新たな転写産物について、細胞株や動物モデルを用いた機能解析を継続する。また、多数患者検体を用いた検証実験を行う。
COVID-19に関連した移動・活動制限が解除され次第、当大学を拠点とした研究形態へと移行する。状況が変わらない場合は、引き続きデータ解析並びに共同研究施設における実験を中心に進める。
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Causes of Carryover |
二年度において7,880,398円の繰越が生じている。これは、初年度に続き、二年度においてもCOVID-19の影響による大幅な移動制限・渡航制限が生じたため、当大学(名古屋市立大学)における直接の研究活動が限定されたことに起因する。研究計画を三年度にシフトするとともに、1年間の延長申請をする形で研究を遂行する。
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